日本人の死亡原因の第1位はがんで2人に1人がかかるといわれています。早期発見・早期治療の重要性が叫ばれる中、胃や食道、十二指腸、大腸の病変を見つける「消化管内視鏡検査」が一般的になってきました。さらに、がんの中でも発見が難しく「サイレントキラー」と呼ばれるすい臓がんも、超音波内視鏡検査によって早期発見が可能になっています。最新の内視鏡検査について、今村病院の内視鏡治療センター長で消化器内科主任部長の橋口一利氏にうかがいました。

超音波内視鏡検査ですい臓がん早期発見を
病変あれば細胞採取、良悪性判断も

ごく小さな病変まで発見

 食べものの通り道「消化器」の内視鏡検査には、咽頭部の一部、食道、胃、十二指腸を検査する「上部消化管内視鏡検査」と、大腸を検査する「下部消化管内視鏡検査」があります。上部消化管内視鏡検査は一般的に「胃カメラ」と呼ばれています。内視鏡検査は消化器の内側を直接、専門家の目でリアルタイムに観察できることが強み。内視鏡の先端にあるカメラで粘膜部分を拡大し、特殊な光を当てて観察することで、ごく小さな病変も見つけることが可能です。
 内視鏡検査の利点は病変部位の発見にとどまりません。良性か悪性か性質の判断までできますし、胃がんの原因となるピロリ菌の感染についても分かります。また、大腸にポリープがあれば、がん化する前に切除するなど、内視鏡は検査と同時に治療ができることも大きな利点です。検査時間も10~20分。内視鏡検査が不安な人には、麻酔を使って検査を行うこともできるので安心です。

身体的負担は胃カメラ並み

超音波内視鏡の太さは胃カメラとほぼ同じ13~14ミリ。スコープの先には超音波端子が装着されている

 内視鏡自体も進化しており、現在は先端に超音波端子を備えた「超音波内視鏡検査」が注目を集めています。食道、胃、十二指腸などの表面だけでなく、それまで確認できなかった臓器の内部に潜む病変の深さや範囲も観察できるようになったのです。中でも、超音波内視鏡が力を発揮しているのが、すい臓がんの早期発見です。
 2017年の部位別がん死亡数(厚生労働省・人口動態統計)では、すい臓がんは男性5位、女性3位で、毎年3万人以上の命が奪われており近年も増加傾向にあります。要因として、進行のスピードが非常に速く見つかったときにはすでに8割の人が手術できない状態にあるということ、早期発見が難しいがんであることが挙げられます。すい臓は長さ15㌢、幅2㌢ほどの大きさですが、胃の後ろに位置するために内視鏡で直接観察することができません。CTやMRIなどの検査でも早期発見が難しいとされています。

・ 超音波内視鏡検査のイメージ

 そこで有効なのが超音波内視鏡による検査です。まず口から入れた内視鏡を胃あるいは十二指腸まで進め、後ろに隠れているすい臓に向かって超音波を当てて病変部位がないかを見ます。病変があれば、内視鏡の先端から針を出して細胞組織を採取し、良悪性の判断を行います。最近の超音波内視鏡は解像度が高く、すい臓の硬さや血流などまで評価でき、より精密な診断が可能になっています。検査は鎮静剤を使用し、時間は10分〜15分ほど。患者の身体的負担は胃カメラ検査とほとんど変わりません。

「1センチ未満」での発見が鍵

 すい臓で作られたすい液はすい管から十二指腸へ送られますが、すい臓がんのほとんどは太さ2ミリ未満のすい管で発症します。がんができるとまず、すい管が太くなりますが、がんが大きくなるまで自覚症状が出にくいのが特徴です。大きさ1センチ未満のがんであれば十分に手術が可能で、しかも長期予後が期待できます。しかし、2センチ未満まで大きくなってしまった場合の手術後生存率は50%となり、それ以上の大きさになると手術は難しくなります。すい臓がんで亡くなられる方を減らすには早期発見・早期治療しかありません。
 糖尿病の人はすい臓がんになりやすいと言われていますし、肥満、喫煙、飲酒のほか遺伝なども危険因子とされています。心配な方は定期的に超音波内視鏡検査を受けることを勧めます。患者さんが心理的にも肉体的にも負担を感じないで済むように、われわれも検診のハードルを下げる努力をしています。がんの早期発見に努めてください。

MEMO
胃や大腸と一体で検査

 部位別にそれぞれ受ける検診を効率的にしたいという人も多いようです。超音波内視鏡検査は通常の胃内視鏡の性能も有しており、胃を観察した後にすい臓も観察できるという利点があります。また、今村病院では同じ日に大腸までチェックする新しい検査体制を確立。検査日は朝から下剤を飲んで腸を空っぽにし、胃とすい臓をチェックした後、大腸を内視鏡で診てもらいます。短い時間で眠ったまま一度に行える超音波内視鏡検査と大腸内視鏡検査で、ストレスなくがん検診を受けることができます。

如水会今村病院 内視鏡治療センター長 消化器内科主任部長

 

橋口 一利
(はしぐち かずとし)防衛医科大学校出身。自衛隊中央病院、岸和田徳洲会病院勤務、第6次イラク復興支援群派遣などを経て、2016(平成28)年4月から今村病院勤務。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本IVR学会認定IVR専門医など多数。

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