一般会計総額が101兆4571億円に上る2019年度予算が成立した。当初予算段階で初めて100兆円を超え、過去最大となる社会保障費や防衛費、10月の消費税増税に備えた景気対策などが盛り込まれた予算には多くの論点があった。だが深掘りの議論が尽くされたとは言い難い。

 最大の原因は、政府側が既定方針を変えない、おざなりな答弁に終始し、統計不正問題などでも疑惑解明に取り組む姿勢を示さなかったことだろう。与党が圧倒的多数の議席を持つ中で、与野党が互いの主張に終始し、議論がかみ合わない審議の現状に、改めて議会の存在意義を問いたい。

 まず統計不正の問題だ。政府の基幹統計は政策立案の基礎となるものだ。アベノミクスの評価や消費税増税の是非を判断する基準にもなる。

 賃金や雇用動向の変化を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査不正を皮切りに多くの統計で不正が発覚した。だが厚労省の特別監察委員会が行った不正原因の調査は組織的な隠蔽(いんぺい)を否定、総務省の統計委員会が不十分と批判する説得力を欠く内容だった。賃金の実態を把握するために野党が求めた「実質賃金」のデータも予算成立までに提出されなかった。

 野党はアベノミクスの成果を強調するために、調査方法の変更に当時の首相秘書官が関与したのではないかと追及したが、元秘書官は「記憶にない」と繰り返した。政府統計に対する不信は解消されないままだ。

 経済運営の在り方は予算審議の焦点のはずだ。ここでも疑問が残る。政府は3月の月例経済報告で景気の総括判断を引き下げるなど、景気の陰りが指摘されている。立憲民主党などは世界経済の不透明さも挙げて消費税増税の見送りを主張したが、安倍晋三首相は「景気は緩やかに回復している」と突っぱねた。

 消費税増税を巡っては、キャッシュレス決済時のポイント還元や軽減税率導入に伴う複数税率などが混乱を招く懸念も指摘されている。議論は十分だっただろうか。

 政府の硬直さが目立ったのは、沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題だ。移設先の名護市辺野古の海底で見つかった軟弱地盤について、防衛省は開示を拒否していた報告書を野党の要求で参院に提出。地盤の改良工事に3年8カ月かかるとの見方を初めて公にした。

 沖縄県の玉城デニー知事は工事の設計変更を承認しない方針で、辺野古移設の完了時期は見通せない。岩屋毅防衛相は「普天間飛行場返還のために辺野古移設を急ぐ」として工事を進めるが、先行きが不透明な中での強行は無責任ではないか。

 防衛費を巡っては、米政府の提示額を受け入れる対外有償軍事援助(FMS)による高額の装備品調達の在り方や、最新鋭戦闘機を搭載できるように改修する護衛艦の事実上の「空母化」と憲法との関係を野党は追及したが、政府は問題ないとの見解を変えず、議論はすれ違いに終わった。

 ロシアとの北方領土返還交渉に関しては、首相も河野太郎外相も「中身に関わることは答弁を差し控える」と説明を拒否した。これで国民の理解が得られるだろうか。

 統一地方選と参院選に向けて与野党ともに選挙態勢に入る。だが、積み残した多くの課題は後半国会での集中審議などで、さらに詰めるべきだ。(共同通信・川上高志)

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