全国で昨年1年間に交通死亡事故は3099件あり、最も過失の重い「第1当事者」となった75歳以上のドライバーは460人いた。件数で全体の14・8%を占め、割合としては過去最高になった。5年連続で減少していた運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数も増加に転じた。この460人について警察庁はさらに詳しく調べた。

 すると、うち414人は事故前に免許更新や交通違反で認知機能検査を受け、ほぼ5割に当たる204人が認知症の恐れがある「第1分類」、あるいは認知機能低下の恐れがある「第2分類」と判定されていた。年を取るにつれ、認知機能や反応する能力が衰えていくのは避けようもない。

 しかし公共交通機関に頼れない地域では、高齢者は買い物や通院など生活の足である車を手放せない。運転が生きがいという人もいるだろう。75歳以上の免許保有者は昨年12月末の時点で563万人に上る。2022年には663万人に達すると推計され、高齢ドライバー事故への対策は喫緊の課題になっている。

 誰しも自らの衰えは認めたくない。しかし第1当事者となってしまっては取り返しがつかない。家族はもちろん、かかりつけ医やケアマネジャーら身近な人たちが日ごろから本人とよく話し合い、手遅れにならないように免許の自主返納など早めの選択を促したい。

 17年3月に改正道交法が施行され、免許更新時などの認知機能検査で第1分類と判定された75歳以上の免許保有者には医師の診断が義務付けられた。施行から1年間の受検者は210万5477人に上り、うち5万7099人が第1分類。自主返納した人などを除いて1万6470人が医師の診断を受け、1892人が免許の取り消しや停止の処分となっている。

 更新前でも逆走などの違反があると、臨時検査が行われる。それでも、75歳以上が第1当事者となる死亡事故は後を絶たない。原因はハンドルやブレーキの操作ミスが多く、電柱など工作物への衝突や出合い頭の衝突、正面衝突、道路外へのはみ出しなどが目立つ。

 警察庁は有識者による議論を踏まえ、運転できる車種を、自動ブレーキなどを搭載した「安全運転サポート車」に限定したり、運転場所を自宅周辺などに絞ったりする「限定条件付き免許」の導入を検討。80歳以上で違反や事故を繰り返す人に運転免許試験場で実車試験を実施する案もある。

 さらに25年には団塊の世代全員が75歳以上となり、新たな対策が必要になるとみられている。

 そうした中、自動運転に注目が集まる。ハンドルやブレーキ、アクセルのいずれかを車載システムがサポートするレベル1から、あらゆる条件下でシステムが全て操作するレベル5まで5段階あり、政府は20年をめどに一定の条件下で緊急時以外はシステムが全て操作するレベル3を高速道路で実用化する目標を掲げている。過疎地で自動運転バスの走行実験も始まり、運転に不安を持つ人の選択肢は免許返納も含め、いくつかある。

 18年に交通事故死者が最多の愛知県で65歳以上へのアンケートがあり、免許を持つ約1300人のうち6割が返納を考えていると答えたものの、ほとんどが「返納時期を決めていない」とした。最後の一歩に周囲の理解と協力が必要だろう。(共同通信・堤秀司)

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