「今は趣味程度」というものの、ほぼ毎日工房に通い絵筆を握る川原留雄さん=有田町の陶次郎工房

受講生に絵の配置をアドバイスする川原留雄さん=有田町の陶次郎工房

 4月に卒寿を迎える伊万里・有田焼伝統工芸士、川原留雄さん(89)=有田町=が、赤絵教室で27年間にわたり指導に励んでいる。柿右衛門窯で長年赤絵を手掛け、「現代の名工」や「佐賀マイスター」に選ばれた上絵付けの匠たくみ。「技術者が減っていく中、絵付けの技を伝えていく使命がある。できるだけ長く続けたい」と、絵筆を取り続けている。

 川原さんは大町町生まれで、戦時中は東京の陸軍飛行学校でパイロットの訓練を受けた。戦後は得意の絵を行かせる仕事をと、二つの窯元を経て20歳のころ柿右衛門窯に。十二、十三代の酒井田柿右衛門に師事し、国重要文化財の柿右衛門製陶技術保存会(濁手にごしで)の赤絵部門を担った。

 1992年の退職後は自宅近くに工房を設け、「陶次郎」の銘で自身の作品を作りながら、県立有田窯業大学校などの講師も務めた。技術の高さが認められ、95年に「現代の名工」、2004年には「佐賀マイスター」に。伊万里・有田焼伝統工芸士会の会長など業界団体の幹部も歴任した。

 工房での赤絵教室は、退職した年に開始した。絵付けの上達を目指す窯元の若手らが、多い時で30人ほど通い、川原さんの手ほどきを受けたという。

 有田焼の職人が減ってきた今は週1回開いており、佐賀、長崎、福岡の3県から30~80代の12人が学ぶ。趣味で続ける人から、窯元で働く人、技術の幅を広げたいと洋絵の具を使った陶芸教室の指導者など、さまざまな目的の受講生が集う。

 「こうして学ぼうという気持ちがある人たちが集まってくれるのがうれしい」(川原さん)との思いから、窯で作品を焼く電気代として月千円の実費のみで、受講料は実質無料で続けている。

 開始当初から通う町内の川口則子さん(81)は「技術だけでなく、先生の人柄で教室の雰囲気が良く、やめられないんですよ」と教室を楽しみに。他の受講生たちも「花鳥などの絵の向きや配置の意味も教わり、知識も深められる」と、絵付け人生70年余の指導者に感謝の思いを話している。

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