米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利上げを見送るとともに、保有資産の縮小を9月末に停止する方針を示した。欧州中央銀行(ECB)も年内の金融引き締めを断念しており、世界経済の減速を背景に米欧の金融政策は利上げ路線からの転換が鮮明になった。為替相場の動向などを通じた日本経済への影響を注視する必要がある。

 FRBは主要政策金利を2019年中は据え置き、20年に1回引き上げて利上げを打ち止めにする見通しだ。08年のリーマン・ショック後に市場に大量のお金を流すために購入した米国債などの資産は、金融緩和の「正常化」で17年秋から徐々に減らしてきたが、今年5月末から縮小ペースを落とし、9月末に縮小を取りやめる。

 今後の政策運営では忍耐強く経済情勢を見守る様子見姿勢を示し、20年に1回の利上げを想定しているとはいえ、FRBは金融緩和の方向にかじを切りつつあると言えよう。昨年は景気過熱を防ぐために4回利上げし、12月には19年中に2回利上げの見通しを公表していたことを振り返れば、大きな軌道修正である。

 その理由は、米景気自体に陰りが見える上に、世界経済に暗雲が漂ってきたことだ。FRBのパウエル議長は今回の決定の背景として、中国経済の減速や米中貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱問題などが米経済に悪影響を及ぼすことに懸念を表明した。

 この認識はECBも共有している。ECBは今月7日、米中貿易摩擦などの影響でユーロ圏経済が減速していることに配慮し、年内の政策金利の引き上げを見送るとともに、景気下支えのために銀行に対する新たな長期資金供給策の導入を決めた。利上げは早くても20年以降になる。

 世界経済にリスク要因が積み重なり、世界的な景気後退を招く恐れがあることは否定できない。昨年12月にFRBが利上げ路線継続の方針を公表した際は、世界同時株安の一因となった。この環境で、米欧の中央銀行が金融緩和の正常化路線を中断するのは、やむを得ない判断だろう。

 しかし、この政策転換により、市場には大量の緩和資金が残され、金融市場や不動産市場のバブル膨張につながる恐れもあることに警戒を怠ってはならない。景気の悪化を防ぐと同時に、緩和資金の負の効果にも注意を払う細心の金融政策運営が求められる。

 日本は困難な状況に置かれそうだ。これまで日銀が金融緩和を継続してきたのに対して、米欧は金融緩和の正常化を進めてきたため、内外の金利差が拡大して円安要因となっていた。今後はこの動きに歯止めがかかって円高圧力が強まり、景気の下押し要因になると予想されるからだ。

 しかも、国内景気はすでに後退しているとの見方が出ている。1月の景気動向指数は景気が数カ月前に下降局面に入った可能性を示し、政府は3月の月例経済報告で景気の総括判断を3年ぶりに引き下げたばかりだ。

 もし世界経済の減速の影響で景気悪化が明確になれば、日銀は追加緩和を検討せざるを得なくなることも考えられるが、追加策の余地は限られている。長期の金融緩和の副作用にも目配りが必要だ。政府の財政政策への期待も高まるだろう。政府、日銀は難しい判断を迫られそうだ。(共同通信・柳沼勇弥)

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