“ぬる湯”で知られる佐賀市富士町の古湯温泉。嬉野、武雄と並ぶ佐賀を代表する温泉のひとつだが、自然豊かな古湯は、静かな湯治場のおもむきである◆それ故に昔から病気療養でこの温泉を利用した文人墨客は数多い。「うつせみの病やしなふ寂しさは川上川のみなもとどころ」と詠んだ斎藤茂吉(1882-1953年)もそうである。長崎医専(現長崎大医学部)教授だった茂吉は、スペイン風邪の悪化で血痰に苦しみ、1920年9月、ここで療養した◆約3週間。病状も和らぎ、当地の人情と湯に感謝、心穏やかにこの地を立ったが、茂吉よりずっと昔、ここで持病を癒やした文人がいた。江戸時代、福岡・黒田藩の藩医でありながら絵をたしなみ、漢詩を愛した上村米山(1789-1852年)である◆米山はリウマチ療養のために1844年2月、この地を訪れ、古湯の湯と自然の美しさに浸り、漢詩を織り込みながら絵を描いた。このほど、江戸時代の古湯温泉の町並みの様子が分かる米山の漢詩集『古湯紀行詩巻』が佐賀市に寄贈され、地元の市立図書館富士館で31日まで一般公開されている◆石橋道秀、山口久範(ともに県立図書館)や古川英文(佐賀城本丸歴史館)ら古文書の達人5人が解読した貴重な資料。古湯温泉の今昔が巧みな水墨画を添えてつづられている。(賢)

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