政府は児童福祉法と児童虐待防止法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。千葉県野田市で1月に小学4年の栗原心愛(みあ)さんが親の虐待により亡くなった事件などを踏まえ、親による子どもへの体罰禁止を明記。親から子どもを引き離して保護する児童相談所の介入機能の強化や、虐待対応を巡る学校や教育委員会の守秘義務を規定する。

 さらに児相に警察職員や警察OBを配置するための支援拡充など虐待防止の強化策を示した。2022年度までに子どもや親の相談・指導を担う児童福祉司を2020人程度増やしたり、子育て支援や虐待情報の収集に当たる「子ども家庭総合支援拠点」を全ての市町村に設置したりする対策も先に発表している。

 改正法を今国会で成立させ、来年4月施行を目指すが、虐待根絶という目標に向けて着実に歩を進めるにはなお多くの課題が残る。全国に配置する児相の網の目を細かくできるか、児相と自治体との間で役割をどのように分担するか、児相職員の質をいかに向上させるか―などが挙げられ、議論を急ぐ必要がある。

 警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は1380件、被害を受けた子どもは1394人。いずれも過去最多で極めて深刻な状況にあり、対策強化は待ったなしだ。問題のある家庭を孤立させないよう見守りの輪を広げていくなど地域の取り組みも求められよう。

 心愛さんの父親や東京都目黒区で昨年3月に亡くなった5歳女児の両親のように「しつけ」と称して虐待を繰り返す事件が後を絶たず、体罰禁止の規定を置く。罰則はない。親に必要な範囲で子どもを戒めることを認めている民法の「懲戒権」について削除を求める声もあり、改正法施行後2年をめどに検討する。

 ただ子どものしつけに悩む親を支えたり、表からは見えにくい家庭内で虐待が陰湿化するのを防いだりする手だてを講じる必要があるだろう。

 児相については、業務として「児童の安全確保」を明文化。虐待が疑われる場合に子どもの一時保護など介入を担当する職員と、その後の親への支援を行う職員とを分ける機能分離を明記する。支援のため親との関係構築を考えて、介入をちゅうちょすることがないようにする狙いがある。

 だが機能分離を行い、人を増やせば、それで事足りるというわけではない。現場経験を積み、虐待リスクを的確に判断できる児童福祉司らの確保と育成が欠かせない。

 守秘義務を巡っては「お父さんにぼう力を受けています」と心愛さんが書いた校内アンケートの回答を市教委側が父親に渡したのを重くみた。

 現在、児相の設置は都道府県と政令市に義務付けられている。設置自治体を増やすため、中核市と東京23区が設置できるよう政府は法施行後5年をめどに人材育成などを支援していくことを付則で定める。中核市は04年の法改正に伴い設置が可能になったものの、設置は全国54市のうち2市にとどまる。子ども家庭総合支援拠点の設置も思うように進んでいない。

 背景に国の支援が不十分との不満がある。財政面で本格的なてこ入れを図るべきだ。児相は虐待対応に特化し、親のサポートは市区町村が受け持つという案も前々からあるが、自治体の役割を強化するなら、それに見合う支援が必要になる。(共同通信・堤秀司)

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