「いちごさん」の苗流出について説明する県農林水産部の中尾政幸副部長(右)=佐賀県庁

収穫したばかりの「いちごさん」

 佐賀県産イチゴの新品種「いちごさん」に関し、県は19日、60代の元県職員が2017年春ごろ、品種登録前の苗を無断で持ち出し、農家に譲渡していたと発表した。県内の直売所で苗が販売されていたことも判明、県は苗の管理体制を強化するとしている。

 流出したのは、品種登録前のいちごさん5株と「佐賀i5号」の1株。17年春ごろ、県農業試験研究センターに勤務していた60代の再任用職員が、処分する予定だった苗を無断で持ち出し、知人の農家に渡した。

 譲り受けた農家は、いちごさんの苗を自ら増やし、近所の農家にも渡した。果実は自家消費だけで、佐賀i5号は17年度産の栽培後に処分したという。

 苗を受け取った近所の農家も自ら増殖し19年1月、県内の直売所で5株を販売した。観賞用として果実をつけた鉢で販売され、「いちごさん」と記載したテープが貼られていた。購入者は特定できていない。

 いちごさんの苗は種苗法上、販売や譲渡ができず、直売所で見掛けた農家がJAに通報し、県に連絡があった。県は今月中旬までに、両農家で栽培されていた苗を全て廃棄処分した。職員は18年3月に退職しており「知人に栽培してもらい品質を見てみたかった。申し訳ない」との謝罪文を県に提出した。

 県は再発防止策として、DNA鑑定体制の整備や知的財産の重要性に関する研修を徹底する。県農林水産部の御厨秀樹部長は「ブランド確立に向けてさまざまな取り組みを進めている中で、誠に遺憾」などとするコメントを出した。

 JAさがの大島信之組合長は、苗の流出を「残念」とした上で「JAとしても知的財産の大切さを生産者に周知していきたい。今後とも県と一緒に生産振興に取り組む」と語った。

 いちごさんは、県とJAグループ佐賀、生産者が7年かけて約1万5千株の中から開発した。JAが契約農家に限定する形で本年度から本格栽培を進めており、来年度は約400戸、約60ヘクタールに拡大する見通し。

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