高校生が日々の活動や成果などをプレゼンテーションする「CHEM(ケム)佐賀8」が2月、佐賀市の佐賀大学本庄キャンパスであった。今年で8回目。芸術・文化活動やプレゼンテーション大会などで高く評価された県内7校の8組に加え、第43回全国高校総合文化祭(2019さが総文)の実行委員や、生徒自らICTルームを運営する東京・広尾学園高の高橋美帆さんらも参加。発表の他、パネル討議でも互いに意見を交わした。
 学校の枠を越え個性豊かに活躍する各組の発表やパネル討議の内容を紹介する。

 

有田工・デザセンチーム 高校生の「休み方改革」提案

全国高校デザイン選手権(デザセン)で優勝した「高校生のための休み方改革」を発表する有田工業高デザセンチーム

 高校生が社会問題の解決策を考える「全国高校デザイン選手権(デザセン)」で昨年、優勝したデザイン科の3人が登場。「休んでも『欠席』にならない夢のような制度の提案」として、デザセンで披露した「高校生のための休み方改革」を発表した。
 「学休」と名付けた休みは、社会人の有給休暇(有休)に着想を得たもの。ただ日本では有休の取得率が低く「学生のうちに休み方を考えるべき」と訴えた。
 有田工業高の生徒556人のうち84%が「(学休を)利用したい」と答えたアンケート結果も発表。学業に支障が出ないよう「成績が悪いと取得できない」などのルールや、県が導入している学習用PCで学休取得日の授業を学べる仕組みも提案した。
 「改革には多くの時間がかかるが、皆さんがより豊かな人生を歩むために、この改革が今の日本には必要」と呼びかけて締めくくった。

 

唐津南・茶華道部 生け花で東京五輪表現

実演した作品の前で、発表する唐津南高茶華道部

 高校生による生け花の全国大会「Ikenobo 花の甲子園」の九州沖縄地区北大会を3連覇し、全国大会に出場した3人が登壇。生け花の魅力を伝え、花を生ける実演や作品についてのプレゼンテーションも披露した。
 3人は生ける時の心掛けとして「花には命がある」「色や形をしっかり見る」「どんな風に生けたいのか、どこに飾るのか、誰に見せるのかによって生け方が違う」と説明。大会では、45分間で1人ずつ計3作品を生け発表することや、競技開始まで花材は非公開などのルールを説明した。
 実際にわずか数分の間に三つの作品を生けてみせた。「東京五輪・パラリンピック」をテーマに、多彩な花材を生かしながら、世界の人々が手をつなぐ様子や人の優しさ、災害からの復興に立ち向かう勇気などを表現したことを説明した。

 

早稲田佐賀・高山凱さん 「幅」のある作品へのこだわり

早稲田佐賀高放送部の高山凱さん

 NHK杯全国高校放送コンテストで、創作テレビドラマ部門の優秀賞(第3位)に輝いた自身の作品「delete(デリート)」を紹介。こだわりのポイントと表現を一つ一つ解きほぐして説明した。
 同作は、SNSで相手の投稿を非表示にする「ブロック機能」のように、スマホで相手が本当に消えるとしたら…というSF作品。高山さんはテーマを「人間関係の希薄化」と説明し、来場者にダイジェスト版を見せた。
 視聴者が考える余地のことを「幅」と表現し、「幅のある作品は印象に残る」と主張。そのためにこだわった点として(1)無声映画(2)表情で見せる(3)音(4)間を生かす―の四つを挙げた。そのうち音については、効果音を映像とは別に録音したことや、BGMも自作したこと、あえて環境音だけにすることで視聴者に考えさせる効果を狙ったことなどを紹介した。

 

佐賀工・パラスポーツ応援隊 「積極的に触れて」選手の思い伝え

障害者スポーツの魅力について語った佐賀工業高電気科「パラスポーツ応援隊」

 障害者スポーツについて、競技動画も交えながら、その迫力や身近で活躍するアスリートたちの思いを伝えた。
 メンバーの一人である松田隆洋さん(18)は、上肢や下肢の切断障害を持った選手によるアンプティサッカーの日本代表として、2017年には世界3位に輝いた。松田さんは「再び日本代表に選ばれること」「競技をみんなに知ってもらうこと」「パラリンピックの正式競技に加えること」を目標に掲げた。
 メンバーは車いすテニスプレーヤーの大谷桃子さん(西九州大3年)にも取材。「障害があってもスポーツをできることやその魅力を知ってほしい」という大谷さんの言葉を伝えた。
 2020東京パラリンピックの盛り上げを呼び掛け、「積極的に障害者スポーツに触れることが大事」と来場者に訴えた。

 

唐津南・虹の松原研究班 土産品の開発でPR

食品開発を通した虹の松原保全の活動を報告した唐津南高虹の松原研究班

 虹の松原研究班は虹の松原の「保全活動の推進」「文化・伝統をPRし未来に伝える」の二つのコンセプトで活動している。中学生から参加している2人は、全国総文祭に向けて土産の開発に着手した課程をプレゼンテーションした。
 手作りの松葉サイダーのほか、松葉の粉末を使ったパンやキャラメルなどの試作に挑戦した。「普通においしい商品ではなく、虹の松原を感じられるお土産を(作りたい)」と模索していたある日、名物松原おこしの麻生本家を訪れた。唐津の三大銘菓だった「松のみどり」というかりんとうがあったことを知り、復活を目指した。
 試作品やパッケージは作成し、企業連携をするまで形になっている。さらに改良を重ね、虹の松原をPRできる土産品の完成に意気込みを見せた。

 

佐賀東・演劇部 全国30カ所での活動を披露

熱演した佐賀東高演劇部

 「YouChangedMyWorld.=君が私の世界を変えてくれた」を合言葉に、年間12作品、全国約30カ所で上演を重ねてきた。作品のテーマは明治維新や命、平和のほか、社会問題を取り上げた演劇などさまざま。この日は、これまでの作品を凝縮したシナリオで演劇を披露した。
 このうち、三重津海軍所を題材にした「明日のきみへ」では「佐賀の誇り」を訴えた。「あなたは今、何に意味を見つけ何を誇っていますか。誇りがあるとすれば与えられた物ではなく、何かを乗り越えた証ではないでしょうか」とメッセージを送った。
 幼稚園児や老人、介護士、佐賀藩士など、ステージ上で変化する部員たちの姿に会場が引き込まれた。上演の最後、松田紗葵部長は「さまざまなご縁に支えられてきたからこそ、これまでがある。合言葉を胸に走っていきたい」と締めくくった。

 

致遠館・北村菜々さん 核兵器廃絶と平和の実現を

致遠館高の北村菜々さん

 北村さんは昨年5月、第21代高校生平和大使として活動を始めた。「微力だけど無力じゃない」のスローガンをかかげ、核兵器廃絶と平和な世界の実現を目標に、全国で講演や署名活動をしている。
 平和について多面的に考えようと、北村さんは「ジェンダー」の問題に着目した。昨年8月、スイスの国連を訪問し、若い女性を支援するNGO団体の女性職員と交流した。「女性だけが女性の権利の問題について考えている現状をどう考えるか」との北村さんの問いに、女性職員は「会話が足りていない。男女関係なく話をしてほしい」と答えたという。
 ジェンダー問題の解決のために「対話」の必要性に気づいた北村さん。「男女関係なく考え、ステレオタイプ(な考え)を捨て、学ぶ姿勢を積極的に見せることが大切」と呼び掛けた。

 

佐賀西・サイエンス部 5分野の研究成果を発表

1年生も含めて5分野の研究や活動について報告した佐賀西高サイエンス部

 サイエンス部は、物理班、科学班、地学班、生物班、1年生班の5班に分かれて活動している。この日は「エネルギー問題の解決」「フレッシュな食生活」「宇宙の神秘」など、各班が研究を重ねてきた成果を発表した。
 そのうち、生物班では「絶滅危惧種の保護」を目的に、佐賀県だけに生息する「アリアケスジシマドジョウ」について研究結果を報告した。圃場整備が原因で減少していると推測した部員たちは、調査を重ねて現状を把握。その上で、保護や生体の解明、人工繁殖実験などを行った。産卵の様子の撮影にも試み、世界で初めて産卵の様子を映像で捉えたという。
 サイエンス部は主に放課後や土曜日に活動している。生物班は早朝4時に登校して研究した日もあったことを紹介し、会場を驚かせていた。

 

総文祭実行委員 「佐賀から発信」総文祭PR

マスコットキャラクター「あさぎちゃん」と登場した「2019さが総文」実行委員会メンバー

 第43回全国高校総合文化祭の生徒実行委員は、総文祭の青いTシャツを身につけて、さが総文マスコットの「あさぎちゃん」と登場し、映像とともに総文祭について紹介した。
 高校文化部の最高の祭典となる総文祭は7月27日から8月1日まで開かれ、計23部門に全国3000校約2万人の高校生が参加する。海外の高校生も参加し、日頃の文化芸術活動の成果を披露する。
 佐賀清和の佐藤雄貴実行委員長は「さまざまなパフォーマンスが佐賀の地から発信される。佐賀の魅力も発信できるよう頑張りたい」と意気込んだ。

 

特別ゲスト・広尾学園(東京都)高橋美帆さん ICTで主体的な学びを

広尾学園のICTルームの取り組みについて紹介した特別ゲストの高橋美帆さん

 高校1年生の高橋さんは「つくりながら学ぶ。ICTから生まれる主体的な学び」をテーマにプレゼンテーションした。
 東京都の私立広尾学園高校に2014年から設立された「ICTルーム」を紹介。3Dプリンターやレーザーカッターなどの機械を使ってものづくりができる。生徒同士がつながり学び合い、新たなコミュニティーを産む場として生徒自ら運営・管理している。
 中高一貫校のため、中高生が垣根なく集う。文化祭ではレーザーカッターで作成した学業成就の絵馬を販売し、校外の人との交流も深めた。
 高校の学習指導要領の改定で主体的な学びが求められる。「“楽しい”といったポジティブな心情が根底にあれば、主体的に取り組める」と高橋さん。学校には自分で目標を決めて努力する場が必要としたほか、教師たちのサポートが欠かせないと説いた。「(教師が生徒を)許容し見守ってくれる安心感の中で(生徒は)活動できる」といい「自分が楽しみ、見ている人が楽しいと思える場所づくりをしたい」と締めくくった。

 

CHEMMUNICATION 思い思いの意見、質問で交流

 

 登壇した各グループの代表者がパネリストとなり、互いに意見を交わすCHEMMUNICATION(ケミュニケーション)。「活動で大切にしていること」「他チームへの質問」の二つをテーマに、思い思いの意見や質問を発表し合い、交流した。
 「活動で大切にしていること」は、それぞれの活動内容やメンバーの個性が際立つ答えが並んだ。佐賀東高演劇部は、部員での話し合いでは必ず円になることや、お客さんとの縁で発表の場が与えられているとの思いから「えん」とひと言で表現。数々の実験をこなす佐賀西高サイエンス部は「ヒューマンエラーなどが起こらないよう丁寧に」。唐津南高虹の松原チームは「思い立ったらすぐ行動」と機動力の高さを強調した。

 
 
 

 意見が違う場合の姿勢について紹介した組も。致遠館高の北村さんは核兵器という大きなテーマを問題としていることから「(自分とは)違う考え方の人とも交流するため、相手の考え方も尊重しながら多面的に考える」とし、総文祭実行委員は経験則から「意見がぶつかり合っても言いたいことを言う」と発表した。
 他のチームへの質問では、「人に伝えること」など共通する課題を持つ組同士で意見を交わす場面もあった。早稲田佐賀高の高山さんは唐津南高茶華道部に「テーマを伝える上で大変な点は」と尋ね、同部は「生けた後でテーマが決まることもある」と回答。佐賀東高演劇部は「人に気持ちを伝える工夫」について問われ、「まず自分たちが役柄を理解する。幅広い年齢層に上演する時は台詞をゆっくり言うなど工夫している」と答えた。
 広尾学園の高橋さんにも積極的な質問が飛んだ。唐津南高虹の松原チームが「機械音痴でも(ICTルームを)使えるか」と尋ねたのに対し、高橋さんは「機械をいじるのではなく、かわいいものを作る気持ちで始めるといい」とアドバイス。高橋さんと同様、ハイテク機器を使いこなす有田工業高デザセンチームからは「3Dプリンターで使っているソフトは」などと専門的な質問も飛び、交流を深めていた。

 

■CHEM佐賀
 CHEMは「クリエイティブ・ハイスクール・エヴァンジェリスト・ミーティング」の略。佐賀大学などでつくる実行委員会が主催。高校生がプレゼンテーションや実演を通し、情報共有や互いの活動を活性化させる「化学反応(ケミストリー)」に期待する催しで、小中学生の進路決定のきっかけにしてもらうのも目的に2012年から開かれている。


【主催】CHEM佐賀実行委員会
【共催】佐賀大学全学教育機構
【特別協賛】学映システム
【協力】佐賀新聞社・C-REVOinSAGA・佐賀大学クリエイティブラーニングセンター
【参加校】有田工業高校・唐津南高校・佐賀工業高校・佐賀西高校・佐賀東高校・致遠館高校・早稲田佐賀高校・総合文化祭実行委員・広尾学園高校(ゲスト)

 

動画

 

 

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