鳥栖市長選に関する質問に手を上げて答える生徒=三養基高校

 佐賀新聞社による主権者教育の出前授業が2月下旬、みやき町の三養基高校で開かれた。今回の授業は、2月いっぱいで閉店したイオン上峰店(上峰町)の跡地活用がテーマ。1年生約200人は、立候補者に扮(ふん)した教諭3人がそれぞれ掲げる“公約”を比較し、自分の意見に近いものを選ぶことで、まちづくりの方針を決める選挙の意義に触れた。また、わずか10票差で当落を決した鳥栖市長選の結果を振り返り、一票の重みも実感した。

 

「わずか10票差」に驚き導入

 現代社会の一環として佐賀新聞社が授業を進めた。多久島文樹NIE推進デスクは、鳥栖市で2月17日に投開票された市長選を取り上げ、投票に行くことの重要性を説明した。
 2人の候補者が立った鳥栖市長選の開票結果が何票差だったかというクイズに対し、生徒たちからは「14」「200」「2万」と大小さまざまな数字が挙がった。多久島デスクがわずか10票差だったことを伝え、座っている生徒たちの一角を指し「この辺りの人が別の候補者に投票したら逆転していたということ」と説明すると、生徒たちは顔を見合わせて驚いていた。
 多久島デスクは44・58%という低投票率にも触れ「有権者は5万人以上いたが、投票した2万5000票のうちの1万2700票あまりで当落が決まった」と投票率の低さを指摘。佐賀新聞が選挙の度に、若い有権者の意見を聞き掲載している「若者の1票」というコーナーを紹介し、「自分の希望や地域のことを考えながら投票に行ってほしい」と呼び掛けた。

真剣な表情で18歳選挙権の説明を聞く生徒=三養基高校

 

イオンの跡地活用で選択模擬選挙

 模擬投票では、町の将来像を巡って3人の教諭が候補者となり、それぞれの政策を述べた。

 

 イオン上峰店の跡地利用についての候補者3人の意見は(1)住民の活動・交流の場としての活用(2)総合的商業施設の再誘致(3)高度高機能型オフィスの整備―の三つ。生徒たちはそれぞれの方針を聞いた上で自分の考えをまとめ、支持する候補者ごとに分かれた。(1)が60人弱、(2)が60人強、(3)が約120人となった。
 生徒に選んだ理由を尋ねたところ、(1)の支持者は「町にはお年寄りが多いので、誰でも交流できる場所が欲しい」「地域交流の場として活用し、スポーツにも力を入れてほしい」と、身近な施設として活用を希望した。
 (2)の支持者からは「上峰には遊ぶ所も買い物する所もない。新しい大きな商業施設が欲しい」「学生の私たちにとってオフィスは身近じゃなく、ショッピングモールの方が魅力的」と、高校生が楽しめる場所を求める声が上がった。
 最も多かった(3)の支持者は「政策が具体的で得られるメリットがはっきりしている」「経済的な面を考えているところが他の候補者と違う」と、地域経済に好影響をもたらす施設としての魅力に引きつけられていた。

候補者の公約について感想を話す生徒
候補者の公約を真剣な表情でメモする生徒


 発表者の意見を聞いた上で、支持する候補者を変えるかどうかを尋ねたところ、ほとんどの生徒は変えなかった。一方で(3)から(2)に変えた男子生徒は「やっぱりイオンがなくなったら遊ぶ場所がなくなる。学生としてそれは悲しい」と理由を語った。
 模擬選挙の司会を務めた中島佑子記者は若い有権者の政治に対する関心が薄れていることを指摘し、「自分の意見を政治に反映させるには、投票に行かないといけない。新聞でもテレビでもネットニュースからでもいいので情報を集め、吟味して投票に行ってほしい」と呼び掛けた。

教諭が候補者に扮(ふん)した姿に笑顔を浮かべる生徒

 

感想

◆渡辺菜理咲さん(16)
 選挙は堅く大人がするものというイメージがあったが、模擬選挙を体験して身近に感じた。将来は選挙に行こうと思った。

◆園田航士さん(16)
 自分たちはまだ選挙に触れたことがないが、模擬選挙をして理解できた。模擬選挙ではこの町がもっと発展するようにと(3)を選んだが、(1)で地域の施設ができれば活気が出るという意見には納得した部分もあった。18歳になったら選挙に行こうと思う。

◆福岡美咲さん(16)
 新聞はたまに読む程度。自分の意見をはっきり言えるようにテレビや新聞でニュースを見て、いろいろと考えていきたい。

◆島田夢菜さん(16)
 子どものそばで働ける企業の誘致が含まれていた(3)の提案は、最近、保育園が少ないと聞くので良いと思った。鳥栖に住んでいるが、市長選の間、駅では候補者が必死に訴えていたのを聞いた。高校生の私たちも有権者として期待されているのだと感じた。

◆池末悠菜さん(16)
 鳥栖に住んでおり、母から10票差だったことを聞いて、たった1票でも未来が変わるんだと実感した。イオンの跡には、高齢化社会でも孤独な高齢者を生まないよう、交流できる場ができるのが一番現実的だと思った。

◆その他の生徒の感想(ワークシートから)
 ・身近な人や場所についての模擬選挙をすることで、選挙についての関心がとても高まった。
 ・候補者によって大切にするものが違って、どの候補者が選ばれるかで全然違う町になると思った。
 ・選挙とは違ってすごく身近に感じられることだったので投票しやすかった。これからもっとニュースをよく見るようにして、誰が今の自分の意見と一番近いのかを見極めることができるようにしたい。
 ・体験をしてみて、どの人を選ぶべきかを考えるのは大変だと思った。皆一人一人、とても良い意見を持っているから、自分の考えもよく理解して選ばなければならないと思った。
 ・今まではその人の人生を変えてしまうかもしれない1票ということを知っていたからこそ、投票する人を決めるのに時間がかかるから、投票するのはやめよう、と思っていた。でも、これからは考えぬいて投票してみよう、と思えるようになった。

 〈選挙に関心を持った理由〉
 ・たったの10票差で、今後の未来に大きな影響を与えることに驚きを感じたから。私たちのたった10人が投票することで勝敗が決まるということを知り、1票が本当に大事なんだなと思ったから。
 ・身近なことについての模擬選挙をすることで、何が良いのか、その理由などを真剣に考えることができ、意外と楽しいなと思ったから。

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