九州新幹線長崎ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)の整備方式見直し論議が夏前に一つの節目を迎えそうだ。与党検討委員会は佐賀、長崎両県とJR九州から意見聴取した上で、6月ごろまでに全線フル規格かミニ新幹線のいずれかに絞り込んだ素案をまとめる方針を示した。当面は意見聴取の場で佐賀県が何を語るのかが焦点になる。

 検討委が6月ごろまでに決めるのはあくまで一定の方向性を示した素案であり、その先にある佐賀県との詰めた議論には「期限を区切らない」と配慮を見せている。とは言え、与党から示される素案が県にとって大きなプレッシャーになるのは間違いない。県は与党のペースに飲み込まれないよう、念入りな備えをして、意見聴取の場に臨むべきだ。

 在来線を走って整備費を抑えるフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入断念後、県は全線フルかミニ新幹線かの2択を迫られたが、「選ぶ立場にない」と、いわば“受け身”の姿勢を取ってきた。こうした状況下で与党が議論の糸口とみるのが、検討委の山本幸三委員長が1月に県を訪れた際、山口祥義知事から提示された「建設費の負担」「在来線の取り扱い」「ルート」「地域振興」の四つの課題だ。

 検討委はこれに関し、意見聴取の場で県の考え方をただしてくるだろう。議論を中身のあるものにするために、検討委は事前に県の実質負担額を示すべきだ。いろいろな人がそれぞれの立場ではじいた額を論じ、混乱の一因になっている。条件を仮置きした大まかな試算になるとしても、そこが見えてこないと議論は動き出さない。

 山口知事は建設費に関し、国や地方の負担割合を決めた現行の整備スキームのままでは「全線フルを議論できる状況にない」と述べてきた。裏を返せば「全線フルを議論するつもりなら、スキームを変えるのが条件」とも読める。知事の意向に対する与党の本気度が問われよう。

 言うまでもなく、整備方式の見直し論議における最重要プレーヤーは佐賀県だ。国土交通省が2009年に定めた新幹線の着工5条件の一つに「安定的な財源見通しの確保」がある。つまり、県が地元負担分の予算を組まなければ、くい一つ打てないということだ。地方自治の観点からも、政府与党といえども県が望んでいないものを押し付けることは許されない。

 6月までに素案を示すとした検討委に対し、真っ向から反発した山口知事だが、「国の責任で方向性を示すべき」「新たな提案があれば話を聞く」とも述べてきた。これは議論の輪に入る意思表明でもある。新幹線の世界では沿線自治体もJR各社もそれぞれの立場で、やってほしいことを言い合っている。そんな中で佐賀県の受け身の姿勢を、「異質」と捉える関係者は少なくない。今後は県として意思を明確に示さなければならない局面が必ず出てこよう。

 この問題は県の将来を左右する最大規模の社会資本整備の話だ。新幹線が開通することで得られる効果と課題を分析し、限られた財源の中でいくらまでなら出せるかをシビアに見極めなければならない。山口知事にはリーダーとしての厳しい判断と県民への説明責任が求められる。

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