平安末期の絵巻物で奈良国立博物館に寄託されている国宝『信貴山縁起』。同じく国宝で、12世紀中ごろのものとされる京都・高山寺に伝わる『鳥獣人物戯画』◆『信貴山縁起』は、信貴山を再興した修行僧命蓮にまつわる説話を描いたもので、さまざまな人物の表情姿態を躍動感あふれる巧みな筆致で描いている。一方、『鳥獣人物戯画』はウサギやカエル、サルなどを擬人化した絵巻物◆共に日本における“漫画文化のルーツ”とされるが、あえて分けるなら前者はコミック、後者は風刺漫画と言えようか。日本だけでなくどこの国にも漫画はあったようで、古代エジプト時代、パピルス紙に描かれた風刺画が大英博物館やカイロ博物館に多く所蔵されているそうだ◆風刺漫画と言えば、佐賀市出身の漫画家針すなおさん(85)の政治漫画が本紙に登場したのは1994年3月のこと。以来ずっと日曜日付で、今の世の中の出来事をしかと見つめ“政(まつりごと)のおかしさ”を一枚の漫画で見事に風刺している。先週10日付は厚労省統計不正をテーマに棒グラフの“階段”をズルッと滑り落ちる根本大臣だった◆風刺画は絶対的権力に対する庶民のきつい皮肉と抵抗と言ってもいい。連載は26年目に入るが、針さんの世の中を見る目の確かさ、政治のありようをぎゅっと凝縮する力にはいつも脱帽である。(賢)

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