今季J1開幕戦。スタンド前にはずらりとサイゲームスの看板が並ぶ=2月27日、鳥栖市のベストアメニティスタジアム

 悲願だった昇格から5年。地方都市をホームとするサガン鳥栖はいかにJ1での地歩を確かなものにし、鳥栖をサッカーで盛り上げようとしているのか。クラブ経営、ユース育成、ホームタウンづくりの三つの視点から探る。

 「12期(2015年度)の売り上げは、24億7700万円を見込んでいる」

 2月20日、鳥栖市のサンメッセ鳥栖で開かれたサポーターミーティング。サガン鳥栖の運営会社「サガン・ドリームス」の竹原稔社長がそう告げると、会場から拍手とどよめきが上がった。昨年9月に示した予測を1億3千万円上回る過去最高の数字。竹原社長は「J1平均の30億円に満たないチームだが、リーグ制覇やACL出場を目指したい」と決意を示した。

■「目安」遠く

 「30億円」は、竹原社長が「J1上位で戦うための経営規模の目安」とする数字だ。各クラブの営業収益平均は32億9千万円(14年度)、昨季を制した広島が31億5千万円(同)。一定レベル以上の選手やコーチングスタッフをそろえ、他チームに伍(ご)していくにはこの程度が必要とみる。

 鳥栖はJ1昇格を決めた11年度が6億7900万円で、13年度17億円、14年度18億8500万円と順調に収益を伸ばしてきた。だが、「目安」にはほど遠い。13、14年は連続赤字で、額は計約6億6千万円。12年に5億5千万円だった「チーム人件費」が、14年は11億円に膨らんでいる。

 それでも「J1に残るために最低限の準備」と竹原社長は話す。目指すのは、勝つことでスポンサーがつき、スポンサーがつくことで戦力が充実し白星が増える“好循環”。経営的に無理をしても戦力をそろえることが必要だったという。そして「チーム人件費」を賄うために、クラブはさまざまに手を尽くす。

 大手スポンサーでは2008年から継続しているDHCに加え、昨季第2ステージ、『グランブルーファンタジー』などヒットタイトルを多数抱えるゲーム開発会社「Cygames(サイ・ゲームス)」と契約を結んだ。11年設立ながら15年の当期純利益が62億円に上る急成長企業。「タイトル獲得」に向け最大限の支援を申し出たとされる有力スポンサーの獲得は、今季指揮を執るマッシモ・フィッカデンティ監督の招聘(しょうへい)につながった。

■駅に常設店

 今季開幕前日の2月26日、クラブはJR鳥栖駅に常設のオフィシャルショップをオープンした。従来スタジアムにあり、試合日以外ほとんど利用がなかった。1日の利用客が7千人近い同駅に移し、売り上げ増を図る。開店前から並んだ福岡市の女子大学生(22)は「グッズを買えるだけでなく、パン屋さんと一緒になったのがいい。足を伸ばしたくなる」と歓迎する。

 「ビッグスポンサーが入ってタイトルを取ったというのではなく、ファン一人一人や地元スポンサーをきっちり固めて、“みんなのタイトル”にしたい」と竹原社長。目指す「30億円」に向け、ピッチの外でも戦いは続く。

 J1で5年目のシーズンを戦うサガン鳥栖が、いかにして地方都市で基盤を築いてきたかを探る。3回の予定。

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