攻守に分かれ、さまざまな局面での対応方法を学ぶユースチームの選手たち=佐賀市健康運動センターサッカー場

 午後5時。佐賀市健康運動センターのサッカー場にサガン鳥栖ユースの子どもたちが姿を現した。2014年4月に佐賀市が整備した人工芝と天然芝のグラウンドを優先的に使用、プロを目指して技術を磨く。

 Jリーグの理念の一つであるユース育成。地域にサッカー文化を根付かせる意味合いと同時に、クラブの健全経営促進につなげる狙いもある。「自前」で選手を育てることで、高額な契約金で選手を招く経費を抑えられるからだ。

■「自前」選手ゼロ

 サガン鳥栖もU-12、U-15・U-15唐津、U-18の育成チームを持つ。U-15は九州で2連覇、U-18も2013年に各クラブユースや高校の強豪校が集うプリンスリーグ九州1部昇格を経験するなど、レベルは低くない。

 ただ、他のJ1クラブに比べると、トップチームとのつながりは薄い。今季の選手名鑑によると、下部組織出身者の数はG大阪19人、柏17人、鹿島、横浜FM10人に対し、鳥栖と甲府はゼロだ(他は一桁)。

 なぜ、ユースから上がって来ないのか。元サガン鳥栖エースの竹元義幸アカデミーダイレクターは「子どもや保護者にとってプロへの道が開けるかは真剣な問題。これまでは高校進学と同時に有望株がより環境の整った他クラブや強豪高校に流出してきた」と話す。

 クラブはこうした状況の改善を目指す。佐賀市健康運動センターサッカー場の優先使用確保もその一つだが、欧州有名クラブとのパイプづくりを進め、育成の一助とする道も模索。今年はイタリアのユベントスとスペインのアトレチコ・マドリードに子どもたちを送り、経験を積ませる。

 サガン鳥栖U-18所属でU-17日本代表に選出されたDF藤松航矢(16)も昨年、ユベントスユースで10日間のカリキュラムを受講した。球際の強さやルーズボールの対応などで「世界レベル」を感じた一方で、フィジカルテストでは全て平均値をクリア。「イタリアトップレベルにも負けない」と手応えも得た。

■将来、代表輩出も

 U-18の金明輝監督は「ここ2~3年で環境は大きく改善した」と話す。「U-15で九州連覇した世代がそのままU-18に上がる。最短2年で西日本の強豪が集まるプレミアリーグウエストへの参入も狙える」。竹元アカデミーダイレクターも「クラブは育成に力を注いでいる。数年後には間違いなくその答えが出る」とトップチームに選手が上がることを期待する。

 クラブには、23歳以下の選手でつくるセカンドチームをJ3に参戦させる計画もある。今季はかなわなかったが、竹原稔社長は「2億円ほどかかるが、育成には投資が必要。Jリーグから与えられた課題を解決していきながら、機会があれば食らいついていかねばならない」と力を込める。

 ユース出身の“生え抜き”をJ3で磨き、トップチームの主力に育てる。そして日本代表へ-。クラブが描く将来の姿だ。

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