VOCA展に出品する近藤恵介さん

近藤恵介さん「“わ”と書いて、つぎに“た”、つづけて“し”はシュッとスナップをきかせる--すべて鉛筆で--翌朝に“と”をペンでゆっくり紙にインクをしみこませるようにひき、その日の晩に“そ”を蛍光ペンでなげやりにかく、“の”と“状”は目をつぶる前にベッドで寝そべって指で宙になぞった、その2年後に“況”を画きはじめたが1年はかかるだろう」

 絵画や写真などの平面美術に取り組む若手作家を奨励する「VOCA展2019」に、佐賀大学芸術地域デザイン学部日本画専任講師で画家の近藤恵介さん(37)=佐賀市=の作品が飾られる。

 VOCA展は、全国の美術館学芸員や研究者らから推薦された将来性ある40歳以下の作家が対象。今回は33組が出品する。

 近藤さんは福岡市出身。東京芸術大卒業後、東京で作家活動を行い、東京造形大非常勤講師を経て、昨年10月に佐賀大へ赴任した。日本の絵画をベースに、現代に生きる自分を平面に落とし込む。

 府中市美術館の神山亮子学芸員に推薦されて制作した作品は、七つの表現を組み合わせる。題名は少々長いが、過去の連作タイトル「わたしとその状況」の八つの文字をちりばめ、近藤さんの近況を想起させるような言葉をつづる。

 「北野天神縁起絵巻」の一部を模写した薄美濃紙を貼り付けたガラス板や、アクリル板に定着しにくい水干絵の具で描いた表現など、一見実験的な要素は、紙という日本絵画の支持体のあり方を考えるアプローチ。今日にあり得るべき表現に真摯(しんし)に向き合いながら、佐賀大の前任者が使っていた乗り板を使うなど今の自分を作品に重ねる。

 「日本絵画の蓄積を背景にして豊かな表現を求めていきたい」と近藤さん。月次絵(つきなみえ)に倣って月に1作を発表した「12ヶ月のための絵画」や、三島賞などの小説、劇作家の古川日出男さんとともに行う、絵画と文学がクロスオーバーする展覧会など、さまざまに表現を模索する。作家活動に教育活動を加えた近藤さんのこれからの表現に期待したい。

 ▽VOCA展は、上野の森美術館(東京)で14~30日まで。古川さんとの「、譚(てんたん)」展は、LOKOGALLERY(同)で22日~4月21日まで。

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