「あと500日」―。来年7月24日の東京五輪開幕までの日数である。きのう東日本大震災の発生から8年を迎えたが、東京五輪は「復興五輪」と名付けられているという。だが、被災者の中にはこの言葉に戸惑いの声もある◆「震災から見事に復興した東北の姿を世界に発信しよう」と安倍首相は訴える。戦後の復興を力強くアピールし、高度経済成長期に突き進む象徴となった前回1964年の東京五輪とどうしても重ねてしまうのだろう◆確かに、東北の被災地では住まいの再建がおおむね完了し、農地の9割以上が営農可能となった。きのうの本紙に掲載されていた定点撮影を見ても、サッカー施設に緑の芝生が戻り、道路や防潮堤の整備が進んだ様子が見て取れた◆しかし、原発事故によって帰還困難区域が依然として存在し、故郷に戻れない現実がある。避難生活を続けている人は今なお約5万2千人。避難先で孤立する被災者もいる。岩手、宮城、福島3県の人口は8年で計30万人減少した。「復興」という言葉だけが独り歩きすることに釈然としない思いがあるのも当然だ◆東日本大震災の復興期間は10年と定められ、復興庁は21年3月末に廃止されるという。廃止は五輪の翌年だ。東京五輪の熱が冷めたころ、復興への関心も薄れているようでは大震災の教訓は共有できまい。(丸)

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