有田の古陶磁に描かれた桜の文様(17世紀後半)

 気象庁の区分では、冬は12月から2月、まだ寒くても3月からは春ということらしい。暖冬で冬を象徴する梅の花も早くから咲いていたが、種類によってはまだこれから見頃を迎えるものもあるようだ。

 ただ、この時期になると、やはり気になるのは梅よりも桜。まれに見る暖冬で早い開花と思いきや、桜の場合は、前年の夏に形成された花芽がいったん休眠に入り、冬の低温で休眠から目覚めて、春の気温の上昇により開花する。そのため、暖冬だとかえって開花が遅れることもあるらしい。もの悲しささえ覚える冬の梅に対して、華やかな桜は新緑の春の季節にまさにぴったり、日本の四季の豊かさを感じさせてくれる。

 ただ、桜が春を象徴する花となったのは、江戸時代末期に交雑により華麗なソメイヨシノが誕生した後のこと。そのため、有田の古陶磁の中にもそれ以前から桜花は登場するものの、ほぼ構図の主役とはならず、用いられる頻度も梅に比べるとはるかに少ない。

 桜自体は北半球の温帯地域を中心に広く分布するが、日本のようにお花見文化として定着しているような例はほとんどない。そのため、今日では、海外からの観光客にもかなりの人気で、有力な観光資源の一つになっているそうだ。有田の桜もなかなかのもの。近年では、だんだん外国人観光客の姿も多く見かけるようになっており、有田の意外な魅力に触れてもらういい機会になればと思う。(有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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