冷凍網ノリを摘み取る漁業者。今季は全域で高水温や栄養塩不足に悩まされた=1月10日、佐賀県沖の有明海

 佐賀県沖の有明海では、今季のノリ漁が最終盤を迎えている。全国的な品薄傾向による単価高に支えられ、累計販売金額は5季連続で200億円の大台を突破した。ただ、高水温や栄養塩不足の影響でノリの色落ち被害が広がり、特に冷凍網ノリの生産は苦戦が続いた。比較的順調な県東部海域と、漁業不振が深刻な西南部地区との格差も年々拡大してきている。

 2月末に開かれた県有明海漁協の運営委員長・支所長会議。冒頭のあいさつで徳永重昭組合長は、小まめな摘採や網管理を続けた生産者の努力に敬意を表する一方、深刻な懸念も口にした。「地域の格差が今年ほどひどいことはない」

 今季は冷凍網張り込みの5日後からケイ藻類「スケレトネマ」による赤潮が発生。昨年12月下旬から1月中旬までの降水量が平年の2割程度にとどまったため栄養塩の低下に歯止めがかからず、早い段階から色落ちノリが見られた。漁協内では一時、2000年、02年に次ぐ凶作になるのではと心配する声も出ていた。

 その後のまとまった降雨で最悪の事態は免れたものの、六角川以西の西南部地区では厳しい海況が続いた。太良町沖や鹿島市七浦地区の一部では、本来は書き入れ時となる1月末に生産を縮小し、早々とノリ網の自主撤去が始まった。

 鹿島市七浦の漁業者、井上康二さん(37)は「ただでさえ東部に比べて西南部海域は平年作が少ないのに、今年は色落ちで値段のつかないノリが増えた。それでも経費の出費はどうしても必要になるので、この先も海況がこの状態では不安」と漏らす。漁協のまとめでは、今季の全15支所の売り上げのうち、西南部5支所の占める割合は約15%にとどまっている。

 県有明水産振興センターによると、大きな川がなく栄養塩の供給量が少ない西南部地区は、もともと赤潮の発生が多い条件にある。近年の温暖化の影響で漁期が後ろにずれ込んでいるため、冷凍網の最盛期に被害が重なる傾向にあるという。さらに、今季は水温が平年より1、2度高く、通常は秋芽ノリ期に心配される赤腐れ病が2月上旬から全県的に発生した。センターの三根崇幸係長は「沖からの色落ちと河口からの病気のダブルパンチで生産漁場がなくなり、枚数が伸び悩んでいる」と話す。

 販売枚数、金額とも16季連続日本一の達成は視野に入ってきているが、ぎりぎりのタイミングで雨に助けられるなど、生産はまさに“綱渡り”の状態。漁協幹部は「生産者が意欲を失ってしまうのが何より怖い」と産地縮小を懸念している。

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