伊賀流忍術の霧隠才蔵(きりがくれさいぞう)も苦笑したろう。日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の変装劇。報道陣から目をそらすのが目的だったようだが、奇妙な「忍術」を思いついた弁護士も「彼の名声に泥を塗った」と謝罪した◆ベルサイユ宮殿で豪華なパーティーを開き、プライベートジェットで世界を飛び回っていたカリスマ経営者。反射ベストを身につけ、軽ワゴン車に乗り込む作業員姿を面白がっていたとも。どこか地位ある人の高慢さを見せつけられたようで不愉快な気分になった◆そもそも証拠隠滅を防ぐため、保釈の条件に住居の出入り口への監視カメラ設置などがあったではないか。保釈直後から子どもだましのような「隠遁(いんとん)の術」を使ったとあっては裁判所の心証もよろしくなかろう◆証拠を隠そうとしたり、正当な理由がないのに出頭しなかったりすると、納付した保証金が没収されることもある。10億円という保釈金がゴーン被告にとってどの程度の「重み」があるのか、われわれに知る由もないが◆ゴーン被告がちょうど1年前に出版した著書にこんな言葉があった。「もし自分がリーダーか否かを知りたければ、周りの人の目を見なさい。そうすれば答えが出るでしょう」。変装が人の目にどう映ったか。後ろめたいところがないのなら、堂々とした態度で汚名返上してほしい。(丸)

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