アニメ「ゾンビランドサガ」に登場する屋敷。アイドルグループのゾンビの少女たちが住んでいる(提供)

かつて「三菱御殿」と呼ばれた旧三菱合資会社唐津支店=唐津市海岸通

Cygamesアニメ事業部の竹中信広部長

 佐賀県を舞台にしたアニメ「ゾンビランドサガ」で、唐津市に残る明治の洋館「旧三菱合資会社唐津支店」(県重要文化財)が作中に登場し、ゾンビとして生き返った少女たちの屋敷として描かれている。昨年10~12月に放送され、この洋館にも注目が集まる中、アニメ関係者と建築家がこの近代建築を語る講演会が2日、同市のりふれホールで開かれ、約200人が聞き入った。

■アニメ制作・竹中信広さん「住宅地に異常空間」

 プロデューサーを務めたCygames(サイゲームス)アニメ事業部の竹中信広部長(37)は、2014年の企画段階で「アイドルゾンビ」だったタイトルが、16年に変更になった経緯を紹介した。同社の渡邊耕一社長が伊万里市出身で「ゾンビがアイドルになり、地域を救う企画が『ふざけている』と社内で通らず、舞台を佐賀にすれば通るのではないか、と考えた」と明かし、ファンの笑いを誘った。

 ロケハンで県内を3回訪ね、屋敷の候補には旧唐津銀行(唐津市)と旧古賀銀行(佐賀市)も浮上していた。一行は最初に見学した旧三菱合資に一目ぼれし、「雰囲気がよく、なぜ住宅地にこの建物が建っているのか、異常な空間に感じた。ゾンビであることを隠しながらアイドルになる話で、都市部から少し離れたところが一番の決め手だった」と説明。地下室などを加えているが、建物の基本構造は変えずに描いている。

 アニメ効果で“聖地巡礼”で訪れるファンが絶えない。竹中さんは「建物はずっとそこにあったもの。身近にあるものをどう切り取るかが僕らの仕事。でも身近なものの魅力は気付きにくい」とも語った。

■建築家・中村享一さん「今後に評価、保存を」

 三菱の歴史に詳しい建築家の中村享一さん(68)=長崎市=は設計した保岡勝也に注目した。保岡は唐津出身の2人の建築家と関わりがあり、東京帝国大学では辰野金吾から薫陶を受け、三菱の丸ノ内建築所では顧問となった曽禰達蔵の後任で所長となり、旧三菱合資などを手掛けている。

 かつて「三菱御殿」と呼ばれた優美な木造建築も老朽化が進み、市歴史民俗資料館としては03年から休館。風雨で外観の傷みが進んでいる。昨年8月に現地調査した中村さんは「屋根裏にも入ったが、100年たった今でも問題なく、立派な構造体だった」とし、「保岡の評価はまだ高くないが、これから評価される建築家であり、しっかり残してほしい」と結んだ。

 講演会は地元の市民団体「まちはミュージアムの会」が開いた。

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