桃の節句は過ぎたが、各地でひな祭りが続く。かつては家々の祝事だったが、まちぐるみの華やかなイベントになっている。ひな人形一つ一つに家族の物語を感じ、自身の幼き日、あるいは子の成長を願った日々と重ね合わせる。そんな人も多いだろう。

 着物もそうだ。先日の唐津市老人クラブ連合会主催の「循環式ファッションショー」。リメークした着物を着てさっそうとステージに立つ姿はもちろん、ナレーションが印象的だった。

 「明治37年生まれの母の黒の羽織をポンチョに仕立てました。スカートは主人のへこ帯でした。よく子どもをおんぶし、すり切れたので仕立て直しました」「母が昔、蚕から糸を紡ぎ、織った反物がありましたので、コートにしました」。親子の情景が目に浮かぶ。

 母親の大島紬(つむぎ)の着物をコートに作り直した人は「103歳まで生きた母のぬくもりを感じています」。心も温かくなるだろう。

 着物には物語がある。託された思い、職人技の手触り、そしてハレの日の非日常感。それは昨今のファストファッションにはない、まさに文化だ。

 着物や茶道など城下町に息づく和の文化を生かしたまちづくりの中で、個々の物語も語り継がれていく。(唐津支社長・吉木正彦  )

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