「終末期と看取り」をテーマに400人以上が参加した多職種研修会=2月20日、唐津市文化体育館

 死の床にある患者と向き合う老医師を追ったNHKのドキュメンタリー「在宅死 死に際の医療200日の記録」が反響を呼んでいる。昨年、BSで放送され、8日再放送される。その献身的な姿とともに、「在宅死」をめぐる切実さが視聴者を揺さぶるのだろう。

 どこで、どういうかたちで最期の時を迎えるか。若く元気な時はさほど考えない。その時が近づき、はたと気づいても時間はない。親や配偶者の看取(みと)りもそうだ。

 団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護費の急増が想定される2025年を見据え、厚生労働省は入院から在宅へ、流れを加速させる。在宅死比率40%を目標に、「住み慣れた場所で最期まで暮らせる地域づくり」を提唱する。理想だろう。だが現実は厳しい。

 厚労省の2016年統計によると、全死亡者のうち、在宅死の割合は13%で、病院で亡くなった人が76%、老人ホームなど施設での死亡が9%だった。戦後間もない1950年ごろは在宅死が約80%を占めていた。それが逆転した。

 かつては大家族が自宅での看取りを支えていた。しかし核家族化と少子化で家庭の介護力は弱まった。さらに老老介護の世帯や単身高齢者が増え、在宅死を望んでも叶(かな)わない現実がある。家族にしても容体が急変した時の対応など、不安を挙げればきりがない。

 そうした現状を踏まえ、市町は日常生活圏内で医療と福祉のサービスを一体的に受けられる体制づくりに取り組む。そのためにはまず医師や看護職、ケアマネジャー、介護士、理学療法士などさまざまな専門職の連携が不可欠だ。

 唐津東松浦医師会は唐津市と玄海町の委託を受け、在宅医療・介護連携推進事業に取り組む。“心合わせ”の場として開いた多職種研修会は示唆に富むものだった。

 居宅介護支援センター専門員は末期がんの60代男性の家族から「自宅で好きなビールを飲ませ、近くの海に連れて行きたい」と相談を受け、亡くなるまでの11日間を報告した。小規模多機能型居宅介護事業所の看護師は要介護4の93歳女性を一緒に看取った家族をねぎらい、在宅死の意義を語った。

 山間部で訪問診療にあたる診療所の医師は「多職種連携に上下はない」と、専門性を生かしながら補完し合い、当事者や家族を支えていくことの大切さを強調した。

 市町は福祉に精通していても、実務的な医療には関わっていない。医療関係者はその逆とも言えよう。だからこそ連携が必要であり、当事者自身、望む最期を考え、意志を伝えておくことが大事だ。

 唐津東松浦医師会は「エンディングノート」をテーマにした住民公開講座(16日午後2時、市高齢者ふれあい会館)を開く。そうした取り組みを通じ、住民とともに「看取り」を地域づくりの中に組み込んでいく時だ。(吉木正彦)

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