中国の全国人民代表大会(全人代=国会)第2回会議が開幕。李克強首相は政府活動報告で、2019年の経済成長率目標を「6・0~6・5%」として2年ぶりに引き下げた。成長維持のため景気を刺激しながら構造改革を進める方針を提起し、米中貿易協議の早期妥結に意欲を示した。

 今年は建国70周年、天安門事件30年の節目であり、国内の安定維持が中国の最優先課題だ。しかし、成長減速や米中貿易摩擦などの内憂外患を抱え、微妙なかじ取りを余儀なくされている。

 中国は李首相の公約通り構造改革に本腰を入れ、米国も求める知的財産権保護や市場開放に努め、世界第2の経済大国にふさわしい公正な経済体制を構築すべきだ。

 中国は4年前、高成長期から中成長期への移行を宣言したが、昨年の成長率は米中摩擦の影響も重なり、6・6%と28年ぶりの低水準となった。李首相は減税やインフラ投資の拡大などの景気刺激策で成長を維持する方針を打ち出した。

 中国は来年までに貧困層をなくし「小康社会(いくらかゆとりのある社会)」を実現する目標を掲げており「今年は目標達成のための要の年」(李首相)とされる。

 18年末の貧困人口は前年比1386万人減の1660万人。李首相は今年1千万人以上の削減を掲げており、一定の成長の維持が不可欠だ。

 李首相は昨年の経済を振り返り「特に米中貿易摩擦が一部企業の生産経営や市場の期待に不利な影響を与えた」と総括する一方、平等な交渉で貿易紛争の解決を図る基本方針を強調した。

 昨年、トランプ米政権は知的財産権侵害を理由に中国からの輸入品への追加関税を順次発動、中国も報復関税を課して対立が激化した。今年1、2月に行われた閣僚協議で最終局面に入ったもようで、3月1日の交渉期限は延期された。米紙は米中首脳が27日ごろ会談し、正式に合意する可能性があると伝えた。

 米国は(1)貿易不均衡の是正(2)知的財産権の保護(3)技術移転強要の停止(4)市場の開放―などの構造改革を求めてきた。李首相は報告の中で「知的財産権の保護を全面的に強化する」「全方位の対外開放を推進する」と改めて確約した。

 全人代では、外国企業の技術を強制的に移転させることを禁じた外商投資法が成立する。中国は24年までに対米貿易黒字をゼロにするため輸入を大幅に増やす案を示したとの米報道もあった。

 世界首位、2位の経済大国、米中の貿易摩擦は、両国だけでなく世界の経済に悪影響を与えている。両国は早期妥結を図り、中国は合意内容を誠実に実行すべきだ。

 19年予算案によると、国防費は前年比7・5%増の約1兆1898億元(約19兆8千億円)となり、日本の防衛費の4倍近くに上った。中国の国防費には、研究開発費や装備の輸入費用、武器輸出の収益などが計上されていないため、実際は公表値の2~3倍との国外の分析もあり、透明度を高める必要がある。

 李首相は「平和発展の道を歩む」としながら、「国家の主権と安全、発展の利益は断固守る」として強軍思想も主張した。中国は「平和」と「覇権」という二つの異なったシグナルを国際社会に出している。平和主義に徹する決意を明確にすべきだ。(共同通信・森保裕)

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