読者の要望にはすべて応えたいが、悩ましい問題もある。その一つが紙面のバランス。「佐賀新聞なんだから、もっと佐賀の記事を」という声もあれば、「海外、国内ニュースが少ない」との指摘もいただく。

 あちらを立てれば、こちらが立たずの類いかもしれないが、佐賀から情報を発信するメディアは限られている。その中で、地方紙は県内全域をカバーする取材力を生かし、確かで有益な情報を届けなければ存在意義は薄れる。そう考えると、佐賀に関するニュースが生命線なのははっきりしている。

 編集局では4月の紙面改編に向けて準備を進めている。今回の主眼は地域ニュースの充実。佐賀に根ざした地方紙として、各地の動きをより詳細に伝えるため、「地域の話題」面を毎日、現行の3ページから4ページに増やす。

 そこで大事なのは、増やした紙面をどう使っていくか。あれこれ思いを巡らしていると、佐賀新聞が地域社会のあり方をテーマに連載した「たそがれの時代」(2014年1月~15年3月)の総括シンポジウムに招いた哲学者の内山節さんを思い出した。

 内山さんの著書に『ローカリズム原論』がある。ローカリズムを訳せば「地域主義」。各地域の独自性や特徴を尊重する考え方で、そこに生きる人たちや自然との関係を大事にしようとする。内山さんはローカリズムを志向する人について、「自分たちの基盤とする場所=地域をしっかりもった暮らしをしながら、そこに閉じこもるわけではなく、そこに根を張りながら世界とつながろうとしている」と述べている。

 紙面改編を進めるに当たって、この視点は意識したい。単に地域のイベントを多く載せるだけでなく、さまざまな課題に関わり、深掘りして、よりよい地域づくりへの動きを促す。そこに根を張って暮らす人たちの独自性や自立性を支え、励ますような役割を果たせればと思う。

 誰もが満足する紙面のバランス。答えがあるのかどうかも分からないが、「あちらを立てれば-」を言い訳にこまねくわけにはいかない。「ローカル」に軸足を置きながら、世界にもつながっている-。花時も間近、浮き立つ気持ちを力にして新たな紙面作りに向き合いたい。(大隈知彦)

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