小中学校への携帯電話やスマートフォンの持ち込みを原則禁じてきた文部科学省が方針を見直そうとしている。所持率が高まり、災害時に有用との理由だが、トラブルが心配だ。拙速な解禁は避け、検討を重ねるべきだ。

 大阪府教育庁は4月から防災や防犯のために公立小中学校で認めると決め、運用のガイドライン素案を18日、市町村教育委員会に示した。昨年の大阪府北部地震で、子どもと連絡がつかなかった保護者の要望もきっかけになったという。

 文科省は2009年の通知で小中学校への携帯電話持ち込みを原則禁止とし、高校でも禁止を含めた使用制限を求めていた。自治体や校長の判断で制限している学校が多いとみられる。

 この10年で所持率は急速に高まった。内閣府の17年度の調査では、小学生が56%、中学生は67%、高校生は97%に上る。

 東日本大震災を経て、緊急時に備えて持たせたい親は多いかもしれない。緊急地震速報などは避難に役立つ。安否確認に有効な点も理解できる。塾や習い事で、送迎の連絡や防犯面から必要で、禁止は実態に合わないとの声もあるだろう。

 時代の流れで解禁せざるを得ないかもしれないが、結論ありきで拙速に進めるのは感心しない。どの程度のニーズがあるか、調べるところから始めてはどうか。

 心配なのはトラブルだ。会員制交流サイト(SNS)によるいじめや、子どもが不適切な動画をインターネットで拡散する機会を増やさないか。休み時間にゲームをする子が出ないか。ルールを守り、使い方を考えさせる教育が必要だろう。

 大阪府教育庁の素案は、使用を登下校中の緊急時に限る。校内ではかばんに入れ、学校の指示がないと使わせない方針だ。

 だが、教師の目の届かない所で守られるだろうか。「管理は原則、児童生徒自身に行わせる」という点も気になる。現在、保護者がどうしても持たせたい場合は職員室で預かる学校が多い。

 柴山昌彦文科相は「大阪の動向を注視しつつ、見直しの検討を進めたい」と述べた。全国的に子どもが管理することになれば、影響は大きい。

 スマホは機種により10万円近くする。少なくとも、盗難を防ぐために鍵の掛かるロッカーを用意する必要がある。登下校時の緊急用なら、学校で全部預かるべきだ。「手間が大変」という声が出たとしてもやむを得ない。

 一方で、20年度からの新学習指導要領では、コンピューターのプログラミング教育が小学校で必修化される。タブレット端末を使う学校も増えつつあり、情報通信機器を排除せず、積極的に活用する機運が高まっているという現実もある。

 いずれにせよ、指導も含めて教員の負担は増す。多忙化の中で働き方改革を求めながら「先生に頑張ってもらうしかない」という酷な話になる。

 このため、学校現場には反対意見が強い。ある小学校の校長は「百害あって一利なし」と話す。

 「みんなが持ってきている」となり、親に購入をせがむ子が増える可能性もある。経済的に厳しい家庭に無理をさせ、格差を明確にする後押しになりかねない。

 文科省は持ち込み制限の状況を調査する方針だが、専門家会議などでの検討を経て課題を調べ、時間をかけて対応策を練るべきだ。(共同通信・池谷孝司)

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