沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画を巡り、名護市辺野古沿岸部の埋め立てへの賛否を問う県民投票が投開票され、「反対」の票が「賛成」「どちらでもない」を上回り、投票総数の過半数を占めた。

 県民投票に政府を縛る法的な拘束力はなく、政府は投票結果にかかわらず「辺野古移設が唯一の解決策」として計画通りに進めるとしている。だが共同通信の電話世論調査では86・3%の人が政府は投票結果を尊重すべきだと回答した。辺野古移設の1点に絞って県民の民意が示された意味を重く受け止めるべきだ。

 沖縄の過重な基地負担の現状と歴史的経緯、辺野古移設工事が抱える問題点などを考えれば移設工事をこのまま進めていいのか。政府は一度立ち止まり、県と対話するよう改めて求めたい。

 県民投票は当初「賛成」「反対」の2択だったが、「多様な民意を推し量れない」などと一部自治体が反対したため、「どちらでもない」を加えた3択で実施された。単純に割り切れない複雑な気持ちの受け皿をつくったとも言える。それでも反対票は、知事に結果の尊重を義務付け、首相と米大統領に結果を通知すると定めた基準の「投票資格者の4分の1」に達した。

 県民投票への政府、与党の対応は後ろ向きだった。菅義偉官房長官は告示日の記者会見で、投票結果にかかわらず辺野古移設を進めると明言した。県民の「諦め」を誘う意図だろうか。移設を容認する自民党県連や、党本部と異なり移設に反対する公明党県本部は自主投票で臨んだ。投票運動が盛り上がらないことを狙った対応だろう。

 だが、なぜ沖縄が国の安全保障政策である基地問題を巡って県民投票を行う事態に至ったのかを考えるべきだ。沖縄の米軍基地は戦後、住民が住んでいた土地を「銃剣とブルドーザー」で強制的に奪って造られたものだ。さらに「本土」の基地が反対運動に遭って縮小される中で、沖縄への集中が進んでいった。

 県民投票は1996年に続いて2回目だ。23年前も米軍基地の整理・縮小に「賛成」が圧倒的多数を占めた。だが、在日米軍専用施設は今も約70%が沖縄に集中している。これ以上の負担は「ノー」だという声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだろう。

 辺野古工事が抱える問題点も指摘したい。埋め立て予定海域では極めて軟弱な地盤が見つかっている。沖縄県は地盤改良工事のため完成までに13年、約2兆5千億円以上が必要と試算する。岩屋毅防衛相は「実績のある工法で施工可能だ」とするが工期の長期化と費用増大の可能性は認めている。玉城デニー知事が工事計画の変更を認めない方針であることも併せれば、完成時期は見通せないのが現実ではないか。

 安倍晋三首相は市街地にある普天間飛行場の固定化を避けるために辺野古移設を進めると強調する。だが、2013年の日米合意では滑走路が短い辺野古に替わる緊急時の民間施設の使用が普天間返還の条件となっている。その条件が整っていないことを政府は認めている。辺野古の完成で普天間が必ず返還されるわけではないのだ。

 安保政策は国の専管事項だとしても、県民の声に耳を傾けず、多くの問題を抱える移設計画を進めていいのか。再考を求めたい。(共同通信・川上高志)

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