「まるで地殻変動のように人の心が壊れていく」。もう10年以上前だが、伊万里市であった「家読サミット」で聞いた作家柳田邦男さんの言葉を今も覚えている◆あのころも連日のように、いじめや児童虐待が深刻な社会問題になっていた。柳田さんは、他者の悲しみや痛みを共感する感性が日ごと廃れていく現実を憂えながら目を赤くし、言葉を詰まらせ「幼い子どもへの虐待ほどむごく、痛ましいものはない。幼子の命をいとおしむ感性を取り戻して」◆親からの暴力がどれほど深く、長く子どもの心を傷つけるか、親たちは知っているだろうか。2歳児を足蹴にした容疑で母親が唐津署に逮捕されたその日、鹿児島や広島でも同様の事案が発覚。本紙は「子の涙 やまぬ虐待」(19日付)の見出しで報じた◆県内で昨年1年間に虐待の疑いで県警が児童相談所に通告した子どもは204人(暫定値)。前年の約2倍。悲しい“408粒の涙”である。柳田さんは「失われた人の感性を取り戻してくれるもの、それは絵本である」。絵本を読んで何になると思っている人ほど絵本を-と訴えていた◆絵本を開けば乾いた心が潤ってくる。先の親たちは絵本など手に取ったことがあったろうか。親と子の間には、その数だけ愛情の形があると言うが、今はただわが子を抱きしめてほしいのである。(賢)

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