整備新幹線建設の資金繰りが限界に近づいている。国会で審議中の2019年度政府予算案では九州新幹線長崎ルートと北陸新幹線の建設費膨張分を賄うため、4年ぶりに事業費が増額されたが、その編成の内幕は国土交通省の担当者が「大騒ぎだった」と振り返るほど難しい折衝だったようだ。

 整備新幹線は国と地方が負担する公共事業だ。運行するJR各社は開業から30年間、線路や各施設の使用料として「貸付料」を定額で支払う。これは新幹線を運行することで得られる30年分の利益から算出される。新幹線建設の財源は貸付料収入を充てた残り3分の2を国、3分の1を沿線自治体が距離に応じて負担する仕組みだ。

 ところが、このスキームでは到底財源が足りない。そこで政府、与党は13年から貸付料収入の「先食い」を始めた。すでに開業した区間でJR各社から将来得られる貸付料を担保に金融機関から借金し、建設費に回した。こうして現在建設中の長崎ルート(武雄温泉-長崎)や北陸、北海道の3区間の着工にこぎつけた。さらに15年には3区間の開業時期を早めることで政府と与党が合意。必要な財源として開業さえしていない3区間の貸付料も先食いし始めた。

 国交省は09年に定めた「着工5条件」で「安定的な財源見通しの確保」をうたっているが、次々と「苦肉の策」を繰り出し、この条件を強引にすり抜けてきた。

 整備新幹線は完成間際に建設費が上振れするパターンが定着している。九州新幹線の博多-新八代(11年開業)は894億円、北陸新幹線の長野-金沢(15年)は2141億円、北海道新幹線の新青森-新函館北斗(16年)は1083億円、それぞれ増額した。

 そして今回、長崎ルートの武雄温泉-長崎が1188億円、北陸新幹線の金沢-敦賀が2263億円膨らんだ。これに対し、国交省は金融機関から借金していた貸付料の先食い分を、低金利の財政投融資に切り替えた際に生じた金利削減分から捻出するという策を講じ、国費も増額した。ただ、「適切なコスト管理ができていない」と指摘する財務省との予算折衝は難航し、苦肉の策もそろそろネタが切れはじめている。

 19年度政府予算案の公共事業費6兆596億円の中で新幹線財源は1・3%にすぎない。しかし、道路事業などと違い、絶対に開業時期を遅らせられない特殊性に加え、まちづくりなどで多くの関係者を巻き込む。政治家や地方の関心も高く、とりわけ目立つインフラ事業なのは間違いない。

 1973年、田中角栄元首相の時に策定された整備新幹線計画。当時と違って人口減少が進み、空港や高速道路網も整備された。近年は老朽化に伴う公共インフラの維持管理や防災対策も喫緊の課題だ。限られた財源をどう生かすのか。立ち止まり、再考する時期に来ているのかもしれない。

 佐賀県は新鳥栖-武雄温泉間の整備方式の議論に際し、今の整備スキームのままでは「検討する状況にない」としている。沿線距離に応じて地元が負担する仕組みのままでいいのか。JRの貸付料は適当なのか。国費を増やしていくのか。投資に見合う効果があるのか。政府、与党には小手先ではない、新幹線政策そのものの見直しを辞さない議論を期待したい。(栗林賢)

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