今回の受賞で、自身の制作に「胸を張れるようになったかな」と話す西さん=佐賀大学本庄キャンパス

受賞作「ありとありじごく」は自身が出演。自撮りでカメラを回したシーンも使った(提供)

撮影では、音録りやカメラマン、指示を出す監督など1人何役もこなす

疾走感あふれるシーンでは、台車を使って撮影することもある

 佐賀大芸術地域デザイン学部3年の西遼太郎さん(21)=佐賀市=が、テレビCMやウェブ広告の制作会社が開いた60秒の映像コンテストで金賞に選ばれた。受賞作品の「ありとありじごく」は、サラリーマンが「ブラック企業でいいように使われてしまう」皮肉な現実を映像に込めた。たった60秒にストーリーを詰め込み、審査員をうならせた西さんに、作品への思いや制作の舞台裏を聞いた。

 宇宙船のような、放射状に広がる円形の遊具。「ありとありじごく」には、その遊具の中で夢中で走り回るサラリーマンが登場する。走り続けなければバランスを崩して、あり地獄のように「奈落の底に落ちてしまう」。働き過ぎてしまう日本人とそれを利用するブラック企業にちくりと皮肉を込めた。

 「走る」というコンテストのお題を聞いた時、西さんは幼い頃、祖母の家の近くにあった公園の遊具を思い出した。通称「ありじごく」と呼ばれたこの場所から物語を膨らませた。

 「まず何でもやってみる」と思うことから、制作は始まる。今回初めて使った3DやCGの制作には苦戦したが、友人やインターネットから情報をかき集めた。徹夜続きで編集に励み、締め切りの1時間前になんとか完成した。

 コンテストのために映像を制作したのは初めて。60秒という短い制約の中で伝える難しさもあったが、「せっかく撮影したから」と妥協して入れたシーンは一切ない。

 コンテストは制作会社「TYO」が学生向けに開き、大学生や専門学生などから約600点が寄せられた。「未来のミライ」などの映画監督・細田守さんや俳優の別所哲也さんらが特別審査員を務めた。審査員からは「時間の使い方がうまい」「サラリーマンへの皮肉を重ねてバッドエンドにした構成力の高さがある」と評価された。西さんは「何もないところからではなく、制約があったからこそ表現できた」と振り返る。

 西さんは福岡市出身。高校時代にあった校内の映像コンテストが制作を続けるきっかけとなった。大勢の生徒たちが集まった会場で、空気が揺れるようにわき起こった笑い。そんな観客の反応を見る楽しさと、「より面白いものを」という思いが結びついた。

 映像制作を志望して入った佐賀大では、大学から依頼された学部紹介や授業などで映像を制作してきた。佐賀をテーマにした作品「Nishi1-Shootinthesaga2017」はドローンを駆使して、鍋島直正像や祐徳稲荷神社、小城市の祥光山星巖寺にある五百羅漢などを疾走感あふれる映像に仕上げた。

 中でも印象的なのが満月に照らされた直正像のワンシーン。その日が偶然にも「スーパームーン」だと知った西さんは寒い冬、上着も持たずに急きょ撮影に向かい、2時間ほど定点カメラで撮影。コマ送りで、月が直正像に重なるような神秘的なシーンをおさめた。

 今回の受賞で「自分の制作に胸を張ってやれるかな」と自信をつけた。次は短編作品の卒業制作が待ち受ける。賞金の100万円は、卒業制作に充てる予定だ。将来の目標である映像制作会社への就職に向け、「これからも常に面白いことを考えながら制作していきたい」と胸を躍らせる。

 ■「ありとありじごく」は、TYO学生ムービーアワードの公式ウェブサイト、またはYoutubeで視聴できる。

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