奄美市の中1生徒自殺の事例を元に、指導死を防ぐ手だてについて意見を出し合った学生ら=昨年12月、佐賀大学本庄キャンパス

 教師の指導によって生徒が追い詰められて命を絶つ-。遺族らはそれを「指導死」と呼び、問題視する。第三者委員会が「教師の不適切な指導が原因」と報告した鹿児島県奄美市の中学1年男子生徒の自殺など近年、「指導死」が注目されている。行き過ぎた指導は「熱心さと紙一重」ともいえるだけに教育現場の悩みは深い。佐賀県内でも、佐賀大学で研究者と学生有志らが勉強会を開き、この難テーマと向き合って教訓をくみ出そうしている。

 「指導死」などの著書がある教育評論家・武田さち子さん(60)によると、過去30年で全国の「指導死」は81件(未遂10件)で、約8割は暴力のない事案という。武田さんは「これまで『精神的に弱かった』『自業自得』など遺族側が責められる状況だった。同じような事案が全国で起きていると知り、徐々に声を上げるようになった」と話す。奄美市の事例では、男子生徒が同級生に嫌がらせをしたと担任が誤認して指導。家庭訪問で担任が「誰にでも失敗はある」と男子生徒に声をかけた後、生徒は遺書を書いて命を絶った。

 勉強会は教育学部の佐藤晋平講師(38)が呼び掛け、教員を目指す学生ら14人が参加。昨年末に開かれた初回の集まりでは、奄美市のケースを元に指導する側の対応のあり方や問題点を話し合った。

 佐藤講師は昨年度から、体罰や指導死の事例を講義で扱い、遺族らが体験を語る講義にも取り組んできた。「指導死は、多くの人が悪質だと考えるようなケースばかりではない」と佐藤講師。教員側の善意での励ましや、「厳しければ厳しいほど生徒のためになる」との考えをベースにした指導法が生徒への重圧につながりかねないという。佐藤講師は「生徒が反論できない叱り方などが大きなプレッシャーとなっている。教員は、自分が思う以上に大きな権力を持っている」と指摘する。 

 参加した教育学部1年の矢野裕子さん(19)は「生徒の一面だけでなく、もう一面を見る努力はしたいと思った。一方的な考え方で指導してはいけないと感じた」。佐藤講師は「教員側が普通の指導だと思っていることに傷つく生徒がいる。指導する立場がそのことを自覚しないと、また同じようなことが起きてしまう」と目の前の生徒との向き合い方を見つめ直す必要性を訴える。

 「奄美のように報告書提出の事例などがあれば、取り上げて議論したい」と今後も地道に教訓を探る考えだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加