ふるさと納税や加工品の開発など多角化経営に取り組むイチゴ農家の唐島晶悟さん・花恵さん夫妻=杵島郡江北町

繁殖牛の分娩間隔短縮で成果を上げている井上匡実さん=唐津市肥前町

 意欲的に技術や経営の改善に取り組み、地域農業の振興に貢献している個人・団体を表彰する「佐賀農業賞」。本年度受賞した17の個人、団体のうち、「若い農業経営者」部門の最優秀賞と特別賞受賞者の取り組みを紹介する。

 

最優秀賞・九州農政局長賞

【イチゴ農家】唐島晶悟さん(37)、花恵さん(40)=杵島郡江北町

 

■低農薬栽培、多角化挑む

 「まずはやってみないことには何も分からない。常に行動する農園でありたい」。杵島郡江北町の「むらおか農園」代表の唐島晶悟さん(37)は、そう強調する。低農薬栽培を実践して高品質なイチゴ生産を実現するだけでなく、妻の花恵さん(40)とともに販売面も工夫し、多角化経営を発展させてきた。

 22歳の時に祖父の10アール弱のキュウリハウスを譲り受けてイチゴ栽培を始めた。心掛けたのは初期投資を抑えること。近隣で離農する農家の情報を聞くと、ハウスを譲ってもらえるようお願いに行った。栽培の手があく夏場に自ら解体し、運び、建て直す作業は「思い出したくもないほど大変だった」(晶悟さん)が、借金に頼らず栽培面積を40アールまで拡大でき、うち約30アールは高設栽培を導入した。

 就農当初は収量が上がらず、品質も納得できるものではなかった。「もっといいものを作りたいと強く願った」。植物生理や土壌学を学び始め、篤農家の元に足を運んで栽培の疑問をぶつけた。自らのハウス内で栽培条件を変えて差を観察するなど、貪欲に技術の引き出しを増やした。「病気にかからない元気な株を保つことが一番」と、徹底した土づくりや殺菌剤を使わないで済むハウス内の環境改善に力を入れている。

 販路拡大にも熱心で、ふるさと納税では町を代表する返礼品の一つとして人気となった。現在は通信販売の充実のためホームページを刷新中で、新たな加工品開発にも取り組む。さらに今季から、香港の富裕層向けに化粧箱入りの贈答用高級イチゴの輸出を始めた。国内販売、加工品、輸出の3本柱でバランスの良い経営を目指す。「将来的にはイチゴ狩りやバーベキューができる観光農園ができれば」と晶悟さん。今後も行動する農家であり続ける。

 

 

優秀賞・NHK佐賀放送局長賞

【繁殖牛農家】井上匡実さん(40)=唐津市肥前町

■分娩間隔短縮を実現

 繁殖牛農家にとって牛の出産の理想は「1年(365日)1産」。分娩(ぶんべん)間隔を短縮できれば効率よく子牛が増え、農家の利益につながる。唐津市肥前町の井上匡実さん(40)は、JAや普及センターとともに立ち上げたプロジェクトで若手農家を引っ張りながら、分娩間隔短縮に取り組んできた。

 JAからつ和牛改良組合青年部の設立に尽力し、初代部長に就任。2期目の部長となった2015年にプロジェクトが始まった。

 井上さんの牛舎では牛を「個体」ではなく「群」で管理する。「妊娠鑑定待ち」「受胎確認済み」など繁殖ステージごとに色分けしたテープを貼り、えさの量などを調整。発情サインを見落とさないよう尾の部分にペイントを塗り、エクセル管理表でデータの「見える化」も進めた。

 効果はてきめんで、プロジェクトに取り組んだ青年部メンバーは平均約1カ月の期間短縮を実現。もともと高いレベルだった井上さんも12・5カ月(15年)から12・2カ月(17年)に短縮した。さらに効果を上げようと、スマートフォンのクラウド型データ管理システムを導入、「最小限の労力で最大限の利益を生み出したい」と語る。

 今でこそ若手のリーダー的存在だが、実家の畜産を継ぐつもりはなかった。福岡で会社員だった21歳の時、大黒柱だった父を事故で亡くした。会社を辞め、何も分からない状態で帰郷。周りの畜産農家に助けられ、農業で頑張る同級生や先輩の姿を見て今の道を進む覚悟を決めた。だからこそ青年部の仲間で支え合い成長することを重視する。

 帰郷してまもなく20年。「思った通り大変な仕事。ただ自分が頑張ればどうにでもなるところには、やりがいを感じる。悩み、考えることも楽しい」。牛と向き合う表情には充実感が漂う。

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