診察室に患者さんを呼び入れ、椅子に腰掛けてもらったら、医師はあいさつをします。私は、ずっと「おはようございます」とか「こんにちは」とか言っていたのですが、ある時、接遇講習の講師の方の、患者さんを待たせているのだから、最初のあいさつは「お待たせしました」のほうが良いのではないか、という意見を聞き、それからはそのようにしています。

 あいさつに続き、自己紹介をします。私が医師になった1980年代には、自己紹介をするようにという指導はありませんでした。しかし、90年代後半の医学生は、患者さんと対面したら自己紹介をするようにと教育を受けるようになりました。患者さんと良好な人間関係を構築する、最初の一歩として、自己紹介が非常に大事だということです。

 次に、患者さんの氏名を確認することが求められています。これは、医療を行う上で、患者さんの安全を守るのに必要です。皆さん、今か今かと自分の名前を呼ばれるのを待っておられますので、似たような名前が呼ばれたら、返事をして部屋に入りたくなるものです。だから、別の患者さんが間違って入室されることがあります。また、同じ名字の方が待合室におられることもありますので、氏名をフルネームでうかがったり、場合によっては、生年月日を聞いたりすることがあります。

 ここまで済んで、やっと「今日はどうなさいましたか」という質問が始まります。患者さんとの会話は、主に医師が診断のために質問をするので、長年、「問診」と呼ばれてきました。しかし、今は、患者さんとの良好な人間関係を構築し、治療を行っていく上での動機づけにつなげていくため、「医療面接」と呼ばれています。患者さんにはある程度自由に話をしてもらうわけですが、話が脱線したり、同じことを繰り返されたりすることもあります。

 医師は、短時間で患者さんの症状や不安を聞き出し、患者さんの言葉を医学的に解釈し、医学用語に変換し、カルテを残さないといけません。結構、集中力が必要です。患者さんが、受診するまでの経過や気になることなどを、メモに書いて来てくださると大変助かります。(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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