2019年の春闘が、これから本格化する。今年の労使交渉の論点の一つは、10月に8%から10%にアップする消費税増税だろう。個人消費の減退を招かないためにも、賃上げは不可欠。業績が好調な企業は定期昇給に加え、ベースアップ(ベア)を実施し、賃金体系の底上げを図ってほしい。

 先ごろ、2012年12月から続く景気拡大が、戦後最長となる見通しが示された。ただ、一般国民に、その実感は薄い。理由の一つは給料が上がっていないことだろう。

 連合の調査によると、1998年から2016年までの16年間で、平均賃金は7・8%下落した。単純平均すれば、毎年約0・5%の下落である。物価がそれほど上がらなかったため、生活水準を維持できたと思われるが、給料が上がっていかない状況では、購買意欲は高まらない。戦後最長を更新する見込みの今の好景気は、一部企業の好業績に支えられているだけであり、「デフレスパイラル」から抜けきっていないといえる。

 この悪循環を脱するには、国内でモノがよく売れる仕組みをつくっていく必要がある。購買意欲の向上が必要であり、そのためには賃上げが欠かせない。

 安倍首相が経済界にベア実施を求める「官製春闘」は、2014年から始まり、今年で6年目。連合のまとめでは、14年以降、2%以上の賃上げが実現している。連合佐賀によると、県内は昨年、組合員1人当たり4158円(1・83%)で妥結、2%には届いていないが前年を上回った。景気の先行きを見通すのは難しいが、この賃上げの流れを継続させたい。将来不安の解消とまではいかなくても、毎月の給料が増えることで、消費拡大には寄与するはずだ。

 頑張った分が賃上げとして配分されれば、働く意欲は増す。会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が受けていた報酬は99億円。日産自動車を立て直した手腕は評価されるにしても、一般市民から見れば多額ではある。業績や利益に見合った賃金が従業員にもきちんと配分されてきたのか、疑問に感じた人は多いのではないだろうか。成果配分という観点からも、利益が出ている企業は、それに応じた賃上げに努力してほしい。

 また、賃上げと並行し、4月1日施行の働き方改革関連法についても労使で論議したい。休日付与は経営側の責務だが、法定労働時間内にどう仕事を仕上げるかは、労働者側の意識にかかっている。チームでスケジュール調整を図り、毎日、残業なしで帰宅できる労働環境をつくりたい。定時であがれる職場の実現は実質的な時間給の上昇とともに、社員1人当たりの生産性向上につながるはずだ。

 少子化で労働力人口が減少し、多くの業種で人材確保が課題になっている。将来、AI(人工知能)の進展で省人化が進むかもしれないが、AIを使いこなし、従業員とAIの共存策を考えるのは「ヒト」である。企業にとって負担増にはなるが、賃上げは労働者のモチベーション、購買意欲の向上につながり、消費拡大として企業に還元される。景気の好循環実現への第一歩として、「ヒト」への投資を充実させたい。(中島義彦)

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