経済危機に陥っている南米ベネズエラで、独裁色を強めた反米左翼のマドゥロ政権には正統性がないとして、野党連合出身のグアイド国会議長が暫定大統領就任を宣言した。米国、カナダや欧州主要国、ブラジルなどがグアイド氏を承認した一方、ロシアや中国はマドゥロ政権を支持。国際社会が二分される異常事態になっている。

 国民が主権者として民主的に大統領を選び直すことが望ましいが、マドゥロ大統領は拒み、実権を握り続けている。米ロ中をはじめ関係国は両陣営の争いをあおるのでなく、平和的解決のため英知を結集すべきだ。

 ベネズエラは原油確認埋蔵量が世界一とされる産油国。1999年に政権に就いたチャベス前大統領は「21世紀の社会主義」を掲げ、急進的な反米左翼路線で貧困層の支持を集めたが、2013年に死去。後継のマドゥロ氏は同様の路線を歩んだが、石油価格が低迷する中でばらまき政策を続け、財政が破綻した。

 国民の支持は低下し、15年の国会議員選で野党連合が圧勝したが、マドゥロ政権は支持者で固めた制憲議会を発足させ、国会の立法権を奪った。昨年5月の大統領選では、投獄や公職停止処分などで野党有力候補が出馬できず、マドゥロ氏が圧勝した。

 グアイド氏は無名の若手政治家だったが、野党の持ち回りで国会議長になった。暫定大統領としてグアイド氏を承認した米国は、米石油精製企業に国営ベネズエラ石油への代金支払いを禁ずるなど厳しい制裁を発動。生命線の石油産業に打撃を与えマドゥロ政権の崩壊を促す戦略だが、心配なのは、軍事介入までちらつかせていることだ。

 トランプ米大統領は、軍事介入を「選択肢の一つ」とたびたび発言している。強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、米軍派遣計画を書いたように見えるノートを手に記者会見に臨んで注目された。圧力をかける狙いだろうが、米国が軍事介入に踏み切れば中南米各国で反米感情が噴出し、地域全体が不安定化しかねない。

 グアイド氏は軍部にも協力を呼び掛けた。一部将兵が離反し、反乱の動きもあった。危険な状況であり、グアイド氏は平和的に解決する姿勢を示してほしい。内戦やクーデターといった事態を招くことは避けなければならない。軍事力で問題が解決することはあり得ず、民主主義の復活も国民生活の安定も遠ざかる。

 ロシアや中国はマドゥロ政権への支持を続けているが、破綻した経済をどこまで現実的に支えられるかは微妙だ。極度の物不足やハイパーインフレが進み、商品の値段が一日に何度も上がるのが当たり前という。国際通貨基金(IMF)の予測では、インフレ率は今年中に1千万%に達する。国連によると、人口の約1割に当たる約300万人が国外に脱出した。

 人道危機の様相が強まっているが、国外からの人道支援はマドゥロ政権の抵抗で足踏みが続く。

 危機の打開を目指し、国連での協議に加え、欧州連合(EU)と中南米諸国による「コンタクトグループ(連絡調整グループ)」の閣僚級初会合開催など、平和解決へ向けた外交努力が活発化してきたことは心強い。国際社会は民主的な政権づくりの環境を整えるため力を合わせるべきだ。

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