波多津小を訪れた岡本記代子さん(中央)。短い滞在時間だったが子どもたちと楽しく過ごした=伊万里市の波多津小

子どもたち一人一人に感謝の気持ちを伝える岡本記代子さん(左)=伊万里市の波多津小

 伊万里市の波多津小(西山太佳子校長、90人)の児童が、がん患者との交流を通して「生きる」ことを考えている。岐阜県に住む岡本記代子さん(46)と手紙のやりとりでつながり、先日初めて顔を合わせた。自分の命と向き合い、日々を大切に生きている岡本さんの言葉は、それぞれの心の奥に届いた。

 「みんなにたくさんのパワーをもらったので、ありがとうを言いたくて来ました」。今月4日、波多津小を訪れた岡本さんは、児童一人一人の顔を親しみを込めて見つめた。岐阜から片道約8時間。滞在は2時間足らずだったが、歌や折り紙の花束で迎えてくれた児童と楽しく過ごした。

 昨年11月、「がん教育」の推進モデル校だった波多津小は、授業研究のためにNPO法人「わたしのがんnet」(東京都)のスタッフを招いた。この団体はがん患者と社会をつなぐ活動をしており、岡本さんの手作りの栞しおりを児童たちに渡したことから交流が始まった。

 岡本さんは40歳の時にステージ4の食道がんが見つかり、手術をしなければ余命は1年もないと言われた。手術でがんを摘出したが、1年後に再発し、現在も抗がん剤治療を続けている。

 普段はがん患者の就労支援の仕事をしている岡本さんの元に12月中旬、波多津小の児童からお礼の手紙が届いた。栞を手に笑顔で写っている学年ごとの集合写真が6枚同封され、それぞれに心のこもった励ましのメッセージも添えられていた。「会ったこともないのに…」。胸が詰まった。

 岡本さんは校長に宛てて手紙を書き、子どもたちの温かい気持ちに感激したこと、写真を部屋に飾って毎日元気をもらっていることをつづった。そして、「6年生が卒業する前に会いに行きたい」と伝えた。

 初対面の日。児童や先生は岡本さんの手紙に「がんになって良かった」と書いてあったのが気になって、質問タイムの時に「どうしてそんな前向きな気持ちになれるんですか」と尋ねた。

 「みんなの笑顔に励まされたり、少しだけでも食べられることが幸せだったり。人とのつながりや、生きる喜びをたくさん感じるようになった。不思議だけど、がんになって良かったなって思う」

 目の前の目標を一つ一つかなえていくことが生きるモチベーションになっているという岡本さん。再会を約束し、「みんなとまた会いたいと思うことで、エネルギーが湧いてきます」と笑った。

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