県内のイチゴ栽培技術の向上に貢献してきた前田幸範さん・久子さん夫妻=伊万里市

ミカン栽培の労力分散と長期安定出荷に取り組んでいる山田公寿さん、静子さん夫妻=藤津郡太良町

意欲的に技術や経営の改善に取り組み、地域農業の振興に貢献している個人・団体を表彰する「佐賀農業賞」(佐賀県主催、佐賀新聞社など後援)の表彰式がこのほど開かれ、本年度は17の個人、団体が受賞した。「先進的農業経営者」「若い農業経営者」「組織・集団」の各部門ごとに3回に分け、最優秀賞と特別賞受賞者の取り組みを紹介する。

最優秀・農林水産大臣賞 イチゴ農家 前田 幸範さん(69)、久子さん(68)

栽培レベル向上に貢献

 就農から47年。経営理念に「安心、安全」とともに「省力化と遊び心」を掲げる。伊万里市のイチゴ農家・前田幸範さん(69)・久子さん(68)夫妻は、県の関係機関やJA、肥料や農材メーカーと連携して新技術を次々に取り入れ、県内農家の栽培レベル向上に長年貢献してきた。

 収穫時に実が転がって傷まないよう角度が工夫された台車、かん水に使った分だけ地下水が自動でタンクに補充される仕組み、農薬散布の手間と費用をなくすため、葉の裏に付く害虫のダニを食べてくれる天敵ダニの導入…。「さがほのか」と「いちごさん」を栽培する計34アールのハウスは、工夫であふれている。

 幸範さんはPTA会長などで多忙だったため、久子さんに農作業の負担が集中することもあった。そこで、メーカーの担当者に「こんな風にできないだろうか」と現場の声を提案し、技術改善を図ってきた。1996年には県内でいち早く高設栽培を導入。かがんで作業するため腰に負担がかかる従来の土耕栽培に対し、立ったまま収穫が可能になった。「『働く』とは『端を楽にすること』」と幸範さん。ほかにもベンチ育苗法や炭酸ガス施用などの実証、普及に努めた。

 昨年秋に導入された新品種いちごさんでは、県いちご部会の部会長として約1万5千株からの選抜や試験栽培の段階から協力。今後はいちごさんの普及と栽培技術の確立に力を注ぐ。

 ここ20年で県内のイチゴ生産者数と栽培面積は約半分に減った。「イチゴ作りは苦しい、きつい、重労働という偏見がある。そこを変えないと後継者は育たない」と幸範さん。タブレットでハウス内のデータ管理を始めるなど、今も省力化を追求し続けている。

優秀賞・佐賀新聞社賞

ミカン農家

山田 公寿さん(48)、静子さん(49)

藤津郡太良町

長期安定出荷を実現

 有明海と多良岳を望む高台のミカン畑。藤津郡太良町の山田公寿さん(48)は、妻の静子さん(49)らと約400アールを経営している。経営を安定させるため、計画的に新しい木に更新して長期安定出荷を実現した。2代目農家の公寿さんは「経営の基盤をつくってくれた両親に感謝したい」と受賞を喜ぶ。

 公寿さんは東京都の農業者大学校(当時)などで学び23歳の時、両親のもとで就農した。当時は全国的に極早生(わせ)ミカンがブームで、地元の大浦地区でも主力だった。「学校で各産地の面積や品種を調べていたら全国どこでも極早生ばかり。今はいいけど、過剰になって絶対暴落があり得ると思った」。将来を見据え、極早生品種を少しずつ減らして早生、普通、中晩柑とバランス良く改植を進めていった。

 改植後4~5年は実がならず、収入が得られない。ミカンの相場暴落に苦しんだ時期もあった。それでも「その時は結果が出なくても、地道に継続しないとそれで終わり。継続は力なりと、ぶれずにやってきた」。

 今では、甘さに定評のある「ゆら早生」や果肉が鮮やかなブラッドオレンジなど旬の時期や特長が異なる20系統ほどを栽培し、10~4月の半年間、均等に出荷できるようになった。オフシーズン向けにジュースやドライフルーツなど加工品も作り、ネット販売にも取り組んでいる。

 地元の生産者らでつくる「太良シトラス会」のメンバーとして、関東の大学生と一緒に商品開発したり、PRイベントを開いたりと、地域の活性化も模索する。「地区でミカンを作る仲間みんなが良くないと、産地が盛り上がっていかない」。「太良ミカン」の隆盛が何よりの願いだ。

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