五輪・パラリンピック旗の県内巡回リレーもスタート=4日、佐賀県庁

 2020東京五輪・パラリンピックの開幕まで1年半を切った。高度経済成長の真っただ中だった前回東京五輪から56年。時代とともに「平和とスポーツの祭典」も変容する中で、地方にとってどんな意義があるのだろうか。

 前回東京五輪の1964年、大卒初任給は2万1200円で、マイカー普及率は6%だった。日本社会の変化を実感するが、中でも訪日外国人観光客の増加は著しい。年間35万人から3119万人に、実に90倍の伸びだ。迎える東京五輪は「観光立国」への弾みとなり、首都圏から地方へ、選手や観客の回遊に期待が高まる。

 前段として各地で事前合宿の誘致が進む。佐賀県にはオランダの空手道、タイのアーチェリーとボート、ニュージーランドの陸上に続いてフィンランドの合宿が決まった。フィンランドは陸上など最大18競技の選手団が訪れる予定で、今秋にはプレ合宿も計画する。

 選手たちとの交流はもちろん、外国人観光客受け入れに向けてキャッシュレス決済などハード、ソフト両面の環境整備の契機だ。

 五輪は「国威発揚」の場となってきた歴史があり、メダル獲得数に目が向きがちだが、多様な文化と歴史を持つ国の存在を知る貴重な機会となる。

 参加206カ国・地域の国柄を表現した着物を作る「KIMONOプロジェクト」はそんなメッセージを発信する取り組みである。既に122カ国の着物が完成し、賛同の輪は全国に広がる。

 県内では唐津市出身の国際支援ボランティアが取り持つ縁で、市民や企業団体の寄付によってボスニア・ヘルツェゴビナの着物が完成した。佐賀市でコーヒー店を営む夫婦は産地でもある東ティモールのスポンサーに手を挙げた。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは東欧の小国、東ティモールはインドネシア東部の島国だ。ともに独立をめぐる内戦で血を流し、平和と融和を掲げ新しい国造りの途上にある。制作を通じ、知らない国を知り、戦争や国家のありように関心を持つきっかけとなるだろう。

 さらに前回東京大会が2回目だったパラリンピックは、規模も競技数も格段に増えた。当初は福祉的側面から捉えられていたが、近年は競技性が高まった。県内の小学校などでもアスリートを招いた授業や体験イベントが開かれている。個の限界に挑戦する姿は、障害者スポーツの発展と障害者観の転換を促すはずだ。

 大会旗の県内巡回も始まり、これから機運が高まっていくだろう。前回東京五輪は東海道新幹線の開業など高速輸送時代の幕開けとなったが、一方で東京一極集中を加速化させた。その延長で終わるのか、それとも地方に確かなものを残すことができるのか。助走は既に始まっている。(吉木正彦)

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