昨年3月から続く米中貿易摩擦が決着に向かう可能性が出てきた。トランプ米大統領は1月末にワシントンで開かれた米中閣僚級協議について「大きな進展があった」と評価し、最終合意を目指して中国の習近平国家主席と首脳会談を行う考えを示した。

 世界第1、第2の経済大国である米中の報復関税合戦は両国だけでなく日本を含む各国の実体経済に深刻な影響を与えてきた。緊急事態であり、米中両国が早期に妥協点を見いだし、決着を図るよう期待したい。

 だが、貿易摩擦は本来、トランプ流のごり押しではなく、世界貿易機関(WTO)の多国間の枠組みで公正なルールに従って解決するべきだ。今後の日米貿易交渉ではこの点を強く働きかけていく必要がある。

 2018年の中国の経済成長率は17年より0・2ポイント低い6・6%で、28年ぶりの低水準となった。中国政府は4年前「新常態」(新しい通常の状態)として高成長期から中成長期への移行を宣言したが、貿易摩擦でさらに下振れしたもようだ。

 中国は10月に建国70周年、6月には民主化運動を武力弾圧した天安門事件30年を迎える。習政権にとって国内の安定維持は今年の最重要課題だ。3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代)冒頭の政府活動報告で、李克強首相は今年の成長率目標や経済の重点政策を発表する。人心を安定させ、正確な経済予測を行うためにも同月1日の交渉期限内に貿易摩擦を決着させたいというのが切実な本音だろう。

 米ブルームバーグ通信は閣僚級協議に先立ち、中国政府が対米輸入を計1兆ドル(約110兆円)以上増やし、24年までに対米貿易黒字の解消を目指す案を米側に示したと伝えていた。中国代表団を率いた習氏側近(経済担当)、劉鶴副首相は閣僚級協議で、巨額の黒字解消など大幅な譲歩案を示したもようだ。

 米国は(1)貿易不均衡の是正(2)知的財産権の保護、技術移転強要の停止(3)市場の開放(4)国有企業支援の停止などの構造改革―を求めている。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は知的財産権保護などで進展があり、中国の取り組みを検証する方法も協議したと明らかにした。しかし、構造改革問題では、なお意見の隔たりが大きいとされる。

 劉氏はトランプ氏と面会した際「早期決着」を呼び掛ける習氏のメッセージを伝達。トランプ氏はツイッターで首脳会談での「最終合意」に意欲を示した。ライトハイザー氏とムニューシン財務長官は2月に訪中して詰めの協議を行う。

 米連邦大陪審は閣僚級協議の直前、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)を対イラン制裁違反や米企業からのロボット技術窃取などの罪で起訴した。

 中国は強く非難したが、閣僚級協議は予定通り行われ、歩み寄った。今後も貿易摩擦と個別の事件は切り離し、冷静に交渉を続ける必要がある。

 中国は米中交渉の決着に際して確約する知的財産権の保護や市場の開放などをきちんと実行し、検証も受け入れるべきだ。経済大国となった中国は従来のように「世界最大の発展途上国」として配慮を求めず、公正な経済プレーヤーとして義務を果たしてほしい。(共同通信・森保裕)

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