「女性医師が増えると医療が崩壊する」という意見があります。昨年は女子の医学部受験者に対する点数調整が問題になりましたが、まさにこのようなことを危惧しての対応だったのかもしれません。他にも数々の理由にならない理由が出てきました。ある大学の調査では「女子はコミュニケーション能力が高いので、補正するために一律減点した」と報告されており、私は開いた口がふさがりませんでした。

 確かにこれまでの医療界の発展を支えてきた先人たちに男性が圧倒的に多かったことは否定しません。しかし、そのために圧倒的な男性目線の仕組みができ上がってしまったことが今、問題になっているのです。男性と女性には、妊娠出産以外にも多種多様の性差があります。女性が男性と全く同じような働きができるわけではなく、もちろん逆もまたしかりです。ですから、社会の仕組み自体を性別に関わらず適応できるように変更していけば、女性医師も十分に生かすことができる医療界に変化し、それは医療崩壊ではなくむしろ発展になるのではないかと思います。

 しかしながら、今月厚生労働省が一部の特定の医療機関に勤める医師の残業時間の上限を「年1900~2000時間」とする制度案をまとめました。単純計算で週に36~38時間。週7日で割っても一日5時間以上の「残業」。一般企業ではおよそ考えられないことで、月80時間とも100時間ともいわれる過労死ラインを軽々と上回っています。男だ女だという前に、医師になることをちゅうちょする数字です。働き方改革とは一体なんなのでしょう。医療崩壊の足音が大きくなってきている気がするのは私だけでしょうか。(なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)

このエントリーをはてなブックマークに追加