安倍晋三首相は年頭記者会見で「元気な地方なくして日本の再生なし。地方創生の旗を高く掲げて、最重要課題として政策を総動員してきた」とアピール。今国会の施政方針演説でも「特色を生かし、地方が、自らのアイデアで、自らの未来を切り開くのが地方創生です」と述べている。

 政権の地方向け一大看板である「地方創生」が始まり4年を超えたにもかかわらず、2018年の人口移動報告では、東京圏へのさらなる人口集中が明らかになった。東京圏への転入者が転出者を13万9868人も上回る「転入超過」だったのだ。17年よりも1万4338人も拡大している。

 政府は14年に転入と転出を「20年に均衡させる」目標を掲げたが、事態は悪化するばかりである。国は達成できない原因を分析した上で、東京一極集中の是正策を早急に強化すべきである。

 政府はこれまで、東京23区からの企業の本社機能移転や、文化庁の京都移転などを進めてきた。東京23区の大学定員増を10年間禁止する措置も導入、地方創生推進交付金による自治体の支援にも取り組んでいる。

 だが各政策がどれだけ効果を上げるのか、均衡目標の達成にどう役立つのかは当初から不明確なまま。交付金の仕組みも、成果のあった自治体の施策を他にも広める「横展開」を促進するような内容にとどまっている。

 地方創生を推進する政府の事務局も心もとない。職員のうち中央省庁の官僚は半分にも満たない。残りは自治体や民間企業からの派遣という。もはや国がリードして地方活性化を可能にするアイデアも態勢も乏しいと言わざるを得ない。地方創生は選挙向けの政治的スローガンにすぎないという批判が出るのも当然だ。

 国は有識者会議を設置して成果を検証、20年から始まる第2期の地方創生総合戦略づくりに生かす方針という。片山さつき地方創生担当相は、一極集中の是正のため「手を付けた部分に間違いはないが、動きがどうかチェックしていく」と説明するが、お手盛りの甘い評価は許されない。

 次期戦略には「次元の異なる大胆な地方創生を実現したい」とするが、具体策はこれからだ。

 転入超過を減らすには、東京中心の経済や社会の仕組みを根本的に見直さなければならない。東京は家賃が高く、通勤時間も長く、子育ても大変なのに若い世代が集まるのは、魅力的な仕事があることが大きい。

 国の取り組みとして、首都直下地震などに備える防災面から、首都機能を地方に移すことをもう一度、真剣に議論すべきだ。事業継続の観点から企業の本社機能の移転もさらに促進することで地方の仕事を増やしたい。

 さらに国から地方に権限や財源を移譲して自治体の自由度をさらに上げて競争できる環境を整えることも重要だ。そうなれば自治体が自らの判断で固定資産税など地方税を大幅に軽減して、東京から企業を呼ぶことも容易になるはずである。

 現在は地方税収が増えれば、国からの地方交付税が減らされるため、結果として自治体の努力が報われにくい。だから自治体が「ふるさと納税」でお得感競争までして、少しでも自由な資金を確保しようとする。交付税による自治体間の財政調整は重要だが、やる気をそがない手法も考えるべき時期である。(共同通信・諏訪雄三)

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