トランプ米大統領が任期3年目に入った。今年は2020年大統領選に向けた選挙戦が事実上始まる年であり、トランプ氏と民主党の対立が一層激化しそうだ。政治混乱の余波は米外交にも及ぶ。これまで以上にトランプ政権の行方を警戒して対米関係に臨む必要がある。

 年末から政府の一部閉鎖を招いていた対メキシコ国境の壁建設問題は、つなぎ予算が成立し、閉鎖はいったん終了した。しかし、壁の建設こそが16年大統領選の公約の柱であり、20年の再選に向けた支持固めのために譲れないとするトランプ氏は、民主党との再度の対決を辞さない構えだ。

 過去最長の政府閉鎖という事態にもかかわらずトランプ氏の支持率は落ち込んでおらず、中核の支持層はむしろ不法移民の流入阻止のために壁の建設を強行するよう要求しているほどだ。

 一方の民主党は昨年の中間選挙で大幅な議席増を下院で果たしたことで、米国の民意は同党にあるとの自信を持つ。壁の建設を阻止することで、トランプ氏に失態を演じさせ支持基盤を弱体化させる戦略をとっている。

 壁建設問題が単なる移民政策を超えて大統領選の前哨戦になった感があり、両者が妥協する可能性は小さい。予算案が人質にとられる事態の繰り返しも予想でき、米政府の全体的な政策遂行がまひしてしまう。

 16年大統領選の勝利のためにトランプ陣営がロシアと共謀したかどうかの疑惑を調べている特別検察官の捜査報告書が近くまとまる予定だ。既にトランプ氏の元側近らが司法取引に応じたり、起訴されたりしており、報告書はトランプ氏にとって不利となる内容となりそうだ。

 報告書の提出を受けて、民主党はロシア疑惑のほかトランプ氏の不倫もみ消し資金、司法妨害、脱税などさまざまな疑惑について議会としての独自調査に入る見通しで、トランプ氏との対立の先鋭化は避けられない。

 米シンクタンクの研究では、トランプ政権のホワイトハウス高官の辞任・更迭率は過去の政権に比べて2倍に上っている。忠実であり思想傾向が似ている部下で政権を固めており、長期的な視野に立った熟議の上での政策立案・遂行からは程遠い。

 こうした内政の混乱から国民の関心をそらすためにトランプ氏は外交に活路を見いだそうと、2回目の米朝首脳会談の設定や中国との貿易戦争など派手な動きを続けている。北朝鮮の「非核化」交渉では手柄を焦り真の非核化やミサイルの脅威除去に結びつかない内容で合意する懸念が強い。

 対中関係も、米国内には通信事業を中心に中国を孤立させるべきだとの認識が急速に広がっており、日本など周辺国は神経質にならざるを得ない。マティス国防長官が昨年末の辞任に当たってトランプ氏の同盟軽視に苦言を呈したが、マティス氏ら国際派が政権から去った今、日本にも貿易や防衛問題で強硬策をぶつけてくる公算は大きい。

 日本の対米外交は安倍晋三首相とトランプ氏の友人関係や同氏の娘婿クシュナー上級顧問とのパイプに頼ってきた。しかし政権の混乱が個人的な関係を機能不全にする事態も予想できる。トランプ氏の暴走を防ぐために共和党や民主党指導部、産業界など幅広い層との関係構築を急ぐべきだ。

(共同通信・杉田弘毅)

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