天皇陛下が4月30日に退位され、皇太子さまが5月1日に即位される代替わりに向け政府は、陛下が退位に際して最後となる言葉を述べる「退位礼正殿の儀」や、新天皇即位後に三種の神器のうち剣と璽(じ)(勾玉(まがたま))が受け継がれる「剣璽(けんじ)等承継の儀」など儀式の概要を決めた。これに先立ち2月24日には天皇陛下在位30年記念式典を催す。

 平成の代替わりに伴う儀式は、1909(明治42)年に制定され、戦後に現行憲法の施行に伴い廃止された皇室関連の法令である「登極令(とうきょくれい)」に沿って執り行われた。昭和天皇の逝去後、即位礼に関する定めがどこにもなく、新たにつくる余裕もない中、ほとんど議論をせずに前例を踏襲した。

 今回、議論の時間はあった。しかし政府は早々と「前例踏襲」の結論を出した。このため剣璽等承継の儀に皇族で立ち会えるのは成年の男性のみで、女性は呼ばれないことになり「時代錯誤」との批判を招いた。また登極令は天皇を絶対不可侵とした明治時代のもので、それに倣った儀式は憲法で定められた政教分離や国民主権にそぐわないという指摘も根強い。

 陛下は象徴天皇のあるべき姿を目指し、地震や豪雨の被災者に寄り添い、戦争犠牲者を悼み、障害者をいたわるという務めを自らに課した。それにふさわしい、多くの人が納得する儀式の形を国会と国民で議論し、模索していく必要がある。

 承継の儀は、新天皇の前に皇位の証しとされる三種の神器のうち剣と璽を侍従が置く儀式。これにより皇位継承は完了するといわれるが、宗教的色彩があり、国事行為として行うことには政教分離の観点から専門家の間に疑問の声がある。政府は神器としてよりも「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」という性格を強調して宗教色を薄め、問題はないとしている。

 もう一つ、儀式を巡り焦点となったのが、前例踏襲により参列する皇族が成年男性に限定されたことだ。政府の有識者ヒアリングでは「未成年の男女皇族も参列するのが望ましい」「歴史的には天皇を巡る儀式で女性の参画を禁忌とする原則はなかった」と、時代に即した対応を求める意見も相次いだが、きちんと検討された形跡はない。

 背景には、前例を変えれば女性宮家や女性・女系天皇の議論に飛び火しかねないとの政府、自民党の強い警戒感があるとみられる。安倍晋三首相は「女性宮家を認めることは皇位継承の伝統を根底から覆しかねない」と寄稿したことがあり、退位特例法成立時の国会の付帯決議が求めた「女性宮家の創設等」の速やかな検討には否定的だ。

 11月中旬に予定されている「大嘗祭(だいじょうさい)」についても、代替わり後に皇位継承順1位の「皇嗣(こうし)」となる秋篠宮さまから問題提起があった。新天皇が皇祖と神々に五穀豊穣(ほうじょう)を感謝し、国家・国民の安寧を祈念する重要な祭祀(さいし)だが、宗教色が強く、皇室の公的活動費「宮廷費」ではなく私的経費「内廷費」で費用を賄うべきだとされた。会場となる大嘗宮(だいじょうきゅう)を新たに建てずに既存の神殿を利用し、費用を抑えることも宮内庁に提案していたという。

 政府は変更なしとしている。前例踏襲が無難という考え方もあるだろう。だが憲法の趣旨や国民目線との間にある隔たりについて「伝統重視」を盾に放置するのは怠慢以外の何ものでもない。(共同通信・堤秀司)

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