24日から県内のマックスバリュ、イオンの計5店舗で、イノシシ肉の販売が始まった=佐賀市のマックスバリュ南佐賀店

忠兼総本社が販売するイノシシ脂100%の「ぼたん油」。妊娠線予防に使う若い女性も多いという=佐賀市高木瀬町の同社

 今年の干支(えと)はイノシシ。平成最後、新元号最初となる記念すべき年の「主役」だが、近年は農地や農作物を荒らす“厄介者”となっている。そのイノシシをめぐって、食や美容の分野では、資源として有効活用する取り組みが広がっている。

 佐賀市大和町の西山田観光農園は県内でもいち早く、9年前からイノシシ肉の加工処理施設を整備し、直売所やレストラン向けに販売している。建設会社を経営する代表の池田博司さん(65)が地域の耕作放棄地対策として開園し、地元の猟友会がイノシシの処理に困っている話を聞いたことから加工にも乗り出した。

 新鮮さが保てるよう、農園から30分圏内の猟師と委託契約を結び、1キロ200円で全量を買い取っている。処理頭数は年間約200頭で、1頭ずつ状態をチェックして履歴も管理している。

 「イノシシ肉は食わず嫌いの人が多いが、血抜きなど最初の処理をきちんとすれば臭みはない」と強調。ぼたん鍋だけでなく、バーベキューやしゃぶしゃぶ、すき焼きなどにも合うという。ジャーキーや薫製などの加工品も試作し、今後は保管冷凍庫の増設も検討している。若い人を中心に狩猟やジビエに興味を持つ人は増えており、池田さんは「食文化として広がっていけば」と期待する。

 

 ジビエブームの後押しは供給側にも及ぶ。大手スーパー・マックスバリュ九州は24日から、佐賀県内の店舗でイノシシ肉の販売を始めた。高タンパクで低カロリー、低脂肪であることを打ち出し、消費拡大につなげるのが狙いだ。

 取り扱うのは脊振山系で捕獲されたイノシシで、吉野ヶ里町の鳥獣処理加工センターと連携する。マックスバリュ基山、唐津、南佐賀、伊万里駅前と、イオン唐津店の5店舗で、冷凍のローススライス(150グラム、798円)、切り落とし(同、698円)を販売している。

 同社の中村一博畜産部長は「スーパーや外食産業で扱う所が多くなれば、処理頭数も増える。高齢化が進む猟師のモチベーションが向上し、捕獲頭数の増加につながるような、地域に貢献できるモデルをつくりたい」と話す。

 

 「忠兼(ただかね)総本社」(佐賀市高木瀬町)は、イノシシ脂100%を使った保湿クリーム「ぼたん油」を販売している。

 同社の主力商品は馬油だったが、数年前から原料が高騰したため、イノシシに着目して開発した。保湿能力も高く、昨年1月の販売以来、累計3千個が売れるほど好調といい、イノシシ脂が思うように集まらないのが悩みの種。現在は島根県や石川県などからも買い取っているという。

 百田忠兼社長(33)は「イノシシ肉の消費が増えれば、脂ももっと買い取れる。厄介者に困っている人たちの助けになりたい」と話す。

■野生鳥獣の農作物被害額 2016年度の佐賀県内の被害額は約1億6800万円で、イノシシによる被害は1億500万円と全体の6割を超える。ピーク時(02年度)の4分の1まで減少しているものの、依然として農家にとっては死活問題で、侵入防止柵の機能維持や狩猟免許取得者の高齢化も課題になっている。17年度のシカやイノシシなどの野生鳥獣肉(ジビエ)の全国利用量は前年比27%増の1629トン。佐賀は7トンで、食肉処理施設が販売したイノシシが5トン、自家消費向けが2トンとなっている。

このエントリーをはてなブックマークに追加