佐賀大学芸術地域デザイン学部の教員10人が意見を交わしたシンポジウム=佐賀市本庄町の同学部1号館

 佐賀大学芸術地域デザイン学部が昨年末開いた、現代の芸術の楽しみ方を紹介するアート展「発生の場」のシンポジウムで、教員10人が芸術表現について論議を交わした。主な内容を掲載する。

 作家としても活躍する教員の自己紹介の後に、美術と工芸との違いが論じられ、柳さんが「美術の中に工芸がある。工芸デザインは人の役に立ったり、美しくなければ」と切り出した。德安さんが「(一昨年に退任した)田中嘉生先生は、素材から始めるのが工芸といわれていた」と言うと、近藤さんは「私は日本画の材料の上にテーマがあるが、それが工芸かというとそうではない」と疑問を投げかけた。

 材料やメディア自体の可能性を追究していくものが工芸ではという議論の流れに。工芸という言葉は明治政府の芸術輸出政策に起源があることから、近藤さんが「表現への感情の発露についてはどちらも等しい。それをどの方向に流すかという事ではないか」と指摘した。

 日本画と西洋画という言葉についても話は及んだ。小木曽さんは「『絵画は油絵』という先入観で始めたが、最近は日本画の画材に引かれる」といい、近藤さんと共にジャンルの垣根はなくす方がいいと話は進んだ。ただし、言葉は時代につくられたもので、今の芸術との相関性を考えることも大切だとした。

 地域おこしに芸術が用いられることへの論議は熱気を帯びた。新学部の名称に「地域」が冠されているように、佐大では地域と芸術のつながりを大命題にする。その中で、田中さんは「地域のために何ができるかやってみた。面白い結果もあったが、長続きはしなかった」と振り返り、地域のためという事だけではなく、「地域の個人の欲求を集めたときに成果が出る。それが副産物として地域に還元できればいい」と語った。

 ただ、「美術が遠い存在だった人たちにとってはアートと接するきっかけになったのでは」と土屋さん。柳さんは「種をまく行為として一理ある」と応じ、「ニューヨークのソーホーにアーティストが集まるとそこがおしゃれな街になった。アーティストが意図しないでも芸術にはそれだけの力がある。皆さんがこれから外へ出て行って活躍して、15年後に佐賀へ帰ってきたときに何かが起こることを期待している」と聴講した学生へ呼び掛けた。

 地域と芸術が長続きするいい関係を結ぶにはどうすればいいのか。芸術地域デザイン学部には名前の通り、求められるところは大きく、今後の動きが注目される。

 ◆参加教員

 柳健司教授(ミクストメディア)

 田中右紀教授(窯芸・造形)

 德安和博教授(彫刻)

 小木曽誠准教授(西洋画)

 井川健准教授(漆・木工芸)

 鳥谷さやか講師(染色工芸)

 三木悦子講師(窯芸・プロダクトデザイン)

 近藤恵介講師(日本画)

 花田伸一准教授(アートプロデュース)

 土屋貴哉准教授(コンテンツデザイン)

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