スイス・ダボスで行われた日韓外相会談は、元徴用工訴訟や火器管制レーダー問題など山積する懸案を巡り、双方の主張を応酬するだけで終わった。予想された展開ではあったが、対立状況をこのまま放置するわけにはいかない。外交当局間で対話の枠組みを維持しながら、事態収拾の糸口を模索すべきだ。

 特に、安全保障問題に直結する海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題がこれ以上、紛糾しないような環境づくりに取り組むことが必要だ。このままでは、偶発的な衝突という最悪の事態を引き起こす危険性がある。

 この問題では、日韓の防衛当局が一歩も譲らぬ論戦を展開、日本は実務協議を打ち切った。これに反発するかのように韓国国防省は、日本の哨戒機などによる新たな「威嚇飛行」が今年に入り3回起きたと発表、当時の画像を公開した。

 韓国が日本に強硬な姿勢を貫こうとしている背景には何があるのか。韓国が昨年から北朝鮮と断続的な首脳会談を通じ、南北の平和共存や軍事的緊張緩和を目指していることと無関係ではないだろう。

 韓国が日本との防衛協力、さらには北朝鮮の核・ミサイルといった大量破壊兵器の脅威への対処を主目的としてきた日米韓の協調体制を再検討している可能性があるのだ。

 このほど公表された韓国の国防白書は、北朝鮮の存在を「敵」とする従来の表記を削除した。同時に、日本について「自由民主主義と市場経済の基本価値を共有している」との位置付けも消えた。レーダー照射問題の影響もあろうが、日本との関係を根本から見直そうとの思惑がうかがえる。

 こうした動きは、今年が日本の植民地統治に抵抗して起きた「3・1独立運動」から100周年の節目を迎えている韓国・文在寅(ムンジェイン)政権の歴史認識と密接に関わっているとみられる。

 韓国では3月1日を前後して、100周年の記念行事が中央だけでなく地方自治体レベルでも100件近く計画されている。民族的な自尊心を高揚させるだけでなく、先進国入りした国家として、これからの100年をスタートしようとしているのだ。

 こうした時代感覚を基盤にすると、日本との歴史問題は完全に清算しなければならない課題となってくる。元徴用工訴訟で韓国政府の対応が、法的側面より人道的な配慮に重点を置いているのもこのためだ。

 今後の韓国との対話では、懸案ごとに事態収拾を図ることも必要だが、韓国が日本とどのような関係を築こうとしているのかという本質的な部分に切り込み、共有できる認識の幅を広げていくことが必要だろう。

 日韓が1965年の国交正常化から半世紀以上にわたり維持してきた枠組みは、日韓双方に利益をもたらし、北東アジア地域の安定に寄与してきたという事実を忘れてはならない。

 2月下旬には、2回目の米朝首脳会談が予定されている。北朝鮮が非核化で具体的な措置に踏み込み、米国が北朝鮮への圧力緩和策で応じる可能性も指摘されている。

 その場合、日韓は米国と連携して北朝鮮の非核化を積極的に誘導する役割を担うことになる。日韓関係が地域安保で果たす責任をいま一度、見つめ直すべきだ。(共同通信・磐村和哉)

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