一般市民が事件の審理に参加する裁判員制度の見直しが必要かどうか議論するため、法務省は裁判官、検察官、弁護士のほか、刑事法が専門の大学教授や被害者団体代表らで構成する検討会を設置した。2015年12月に改正裁判員法が施行され、その付則で施行3年後に運用状況などを踏まえ、必要なら見直しを行うことになっていた。

 制度は09年5月に導入された。今年で丸10年になるが、初公判から判決までの審理期間が年々長くなり、サラリーマンや主婦である裁判員の負担は重くなっている。裁判員候補として裁判所から呼び出されても、仕事などを理由に辞退する人が増え「裁判員離れ」を懸念する声も出ている。

 4年前の改正では、審理が著しく長期化しそうな事件は裁判員裁判の対象から除外できるとする規定を設けた。さらに性犯罪を巡る裁判員選任手続きで裁判官が被害者の名前などを明らかにするのを禁じたり、東日本大震災のような大規模災害の被災者を候補から外せるようにしたりした。

 当時の国会の付帯決議は死刑が想定される事件の扱いや、裁判員の守秘義務の在り方などで検討を求めた。今回の議論でも論点になろう。裁判員の負担をいかに減らすか。裁判員制度を司法制度の基盤として根付かせるには避けて通れない課題だ。裁判員経験者の声もくみ上げながら、丁寧に議論を重ねてほしい。

 裁判員裁判が行われるのは、殺人や強盗致傷など最高刑が死刑か無期懲役・禁錮の罪や、傷害致死など故意に相手を死亡させた罪に問われた被告の一審。通常、裁判員6人と裁判官3人で審理する。昨年10月までに6万5千人余りが裁判員を務めた。約2万2千人は欠員に対応する補充裁判員となり、約1万1千人に判決が言い渡された。

 そうした中、裁判員が検察側による死刑求刑と向き合うことも少なくない。14年2月に死刑判決に関わった3人を含む裁判員経験者20人が法相らに死刑執行の一時停止を要請。死刑制度に関する情報が公開されず、国民的議論もないまま死刑が執行されると、裁判員経験者の苦しみは極限に達するだろうと訴えた。

 「自分たちが殺すと感じた」「死刑求刑があり得る事件に裁判員制度を適用しないでほしい」といった声もある。強盗殺人事件で裁判員を務めた女性は、遺体の写真を見るなどして急性ストレス障害になったと国に損害賠償を求め提訴した。

 敗訴したが、もともと制度設計の段階で「死刑判断を市民にさせるのは負担が重すぎる」との指摘はあった。裁判員に死刑判断という「苦役」を強いるべきではない、死刑求刑の時点で裁判員の役割は事実認定にとどめ量刑判断から外すべきだと、さまざまな意見はあるが、いまだ本格的な議論にはなっていない。

 裁判員の守秘義務についても、検討の余地はありそうだ。裁判員法は評議の具体的内容などを漏らすことを禁じ、裁判員は生涯縛られる。ほぼ全てが秘密とされ、判決後の裁判員の記者会見でも感想しか出てこない。例えば、評議でどのような意見が出たかを発言者が特定されないような形で明らかにするのを認める方向も提案されている。貴重な経験が共有され、市民の多様な考え方を司法に反映させるという裁判員制度を後押しすることにもなるだろう。(共同通信・堤秀司)

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