中国は今年10月1日に建国70周年を迎える。1強体制を固めた習近平国家主席にとって、今年の最重要課題は内政と外交を安定させて、建国記念日を盛大に祝賀し、自らの業績と共産党政権の正統性を誇示して国威を発揚することだろう。

 しかし、貿易や安全保障などの面で米中間の対立は先鋭化し、国内では経済成長の減速が懸念される。6月に民主化運動を武力で弾圧した天安門事件30年、7月には少数民族ウイグル族が不満を爆発させたウルムチ大暴動10年の節目も重なり、非民主的な政治体制への国民の不満が噴き出す恐れもある。

 習氏は「人類運命共同体の構築」を目標に掲げるが、中国の覇権主義、強権政治への各国の警戒は根強い。中国は建国70周年に当たり、習氏が唱える「平和的発展」を目指す姿勢を国際社会に明確に示すべきだ。

 昨年来の米中貿易摩擦でトランプ米政権は、知的財産権侵害を理由に中国からの輸入品に追加関税を課し、中国も報復。両国は3月1日の期限までの妥結を目指し、ぎりぎりの交渉を続ける。

 中国は2020年に「小康社会(いくらかゆとりのある社会)」を実現する国家目標を掲げる。習氏は今年を目標実現のための「肝心の年」と位置付け、貧困対策に力を入れる姿勢を強調した。

 しかし、近年、中国の経済成長の減速は顕著であり、米中貿易摩擦の打撃は大きい。習政権は成長率の急落で社会が不安定化するのを避けるため、減税や金融緩和などで積極的な景気刺激策を取る構えだ。

 李克強首相は3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)の政府活動報告で、今年の重点政策や成長率目標を公表する。それまでに何とか貿易摩擦の収拾にめどを付けたいところだ。

 世界第1、第2の経済大国である米中の対立は両国だけでなく、日本を含む世界の実体経済に深刻な影響を及ぼし始めた。米中両国は速やかに収拾を図る必要がある。中国は要求に応じ、知的財産権保護や構造改革に積極的に取り組むべきだ。

 中央軍事委員会主席の習氏は年初の軍事委会議で、米中対立や朝鮮半島を巡る米朝協議を念頭に「世界は大変革に直面し、わが国には発展のチャンスがあるが、リスクと試練も多い」との認識を示し、危機意識を持って軍の任務を遂行するよう求めた。建国70周年の祝賀式典では、軍事パレードを観閲し、軍権掌握と軍事力増強を内外に誇示するとみられる。

 習氏は「世界一流の軍隊づくり」を掲げて、強軍・強国路線を打ち出しており、周辺国と領有権を争う南シナ海で、人工島の造成と軍事拠点化を推進するなど強引な海洋進出を行ってきた。米国は「航行の自由」を主張して周辺海域に軍艦を再三派遣し、安全保障面の米中対立も深刻だ。

 また習政権は一党独裁を守るため人権派弁護士を多数摘発するなど政治的引き締めを強化してきた。国内の安定に重点を置く今年は人権弾圧をさらに強める恐れもある。

 中国が真に平和的発展を体現したいのであれば、覇権を求めず国際社会と協調し、公正で開かれた経済体制と民主的な政治体制を持つ必要がある。習政権は建国70周年に際し「世界に歓迎される新興大国」を目指す前向きなメッセージを発信してほしい。(共同通信・森保裕)

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