2018年に日本を訪れた外国人は初めて3千万人を突破し、3119万人となった。東京五輪・パラリンピックの開かれる20年には4千万人との政府目標の達成は「視野に入ってきた」(菅義偉官房長官)という。

 訪日客の増加は世界的な経済の拡大によって旅行を楽しめる所得層の人が増えたことに加えて、格安航空会社(LCC)の普及などが要因だ。海外旅行は世界的なブームになっており、国連世界観光機関(UNWTO)のまとめでは、00年に6億8千万人だった国際観光客数は、17年には13億2600万人にまで増えている。

 中国や東南アジアの経済成長もあって日本の伸びは大きい。国際観光客到着数で世界トップ10に近づいてきた。観光を基幹産業にするためにも今後は「訪日客の国の多様化」と「観光公害」への対応を急がなければならない。

 訪日客の4分の3は中国、韓国、台湾、香港が占める。最近は経済成長の鈍化もあって中国の伸びが落ちてきた。さらに前年同月の客数と比べると、韓国では下回っている月が目立つ。ブームの一巡だけでなく、経済や2国間関係の悪化が要因と分析できるだろう。

 このように一部の国だけに頼っていると、経済や外交関係の変化によって訪日客の急減につながる恐れがある。これを避けるには、米国や欧州などからの観光客を増やして相手国を多様化するとともに、国同士の関係や景気の影響を受けにくい、親近感を持って何度も来てくれる個人客を増やすことが重要だ。

 実現のためには、インターネットの会員制交流サイト(SNS)などを使い、各地が個性を生かしたプロモーション、アプローチを繰り広げることが不可欠だ。

 東京、京都、大阪に代表されるゴールデンルート以外への誘客のためにも、観光地をネットワーク化し新しい価値を生み出すことも重要だ。インバウンド観光の戦略づくりを担うことができる人材の育成に国はもっと力を入れるべきだろう。

 訪日客は12年の836万人に比べると、3・7倍にもなった。観光客が押し寄せることで生活環境にも影響が出ている。無届けの「ヤミ民泊」などによってごみ捨てや騒音のトラブルが発生、民泊などの宿泊施設が増えることで地域コミュニティーのつながりが弱まり、街づくりの上での課題に浮上している。

 生活の足であるバスや電車が観光客で混雑して通勤や通学に影響が出ている。北海道美瑛町の観光名所「哲学の木」が16年に切り倒されたことも記憶に新しい。撮影のため観光客が木の周りにある農地に入ったりしたことが伐採の理由だ。

 これらの問題は「マナーの向上」などを呼び掛けるだけでは解決できないことは明らかだ。対応に必要な予算の確保のため宿泊税を徴収する自治体もある。

 国レベルでは今年1月7日からは国際観光旅客税(出国税)の徴収が始まった。19年度には500億円とも見込まれる税収を観光公害にも充て対策を強化すべきだ。

 笑顔で「おもてなし」するためにも、困っている人に我慢を強いるのでなく、地域で話し合って改善策を探らねばならない。国は対応策の事例集を作るなど、自治体の取り組みを後押ししてほしい。(共同通信・諏訪雄三)

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