日立製作所が英国での原発新設計画を凍結すると発表した。2019年3月期に3千億円の損失を計上する。事実上の断念とみていいだろう。三菱重工業もトルコで進めてきた原発建設を断念する方向だ。

 海外での原発新設計画は、このほかにもリトアニア、ベトナムなどで断念してきた経緯がある。官民を挙げて推進してきた日本の原発輸出は、今回の大手2社の頓挫によって、とどめを刺された格好と言えるだろう。

 政府は、途上国の経済成長と温室効果ガスの削減に貢献するとし、成長戦略の一環として原発輸出を推進してきたが、もはや、成長戦略たり得ないのは明らかだ。

 東京電力福島第1原発事故以降、世界の原発市場の潮目は大きく変わった。それまでは、温室効果ガスを削減する安価な電源として開発が促進されてきたが、安全対策経費が急上昇、事故を起こした際の賠償負担なども含めると低コストとは、とても言えなくなった。さらに脱原発の流れが強まり、太陽光、風力などの再生可能エネルギーの活用が拡大し、ビジネスとしての可能性は大きく減じられた。

 こうした潮流が強まる中でもなお、原発輸出を成長戦略として掲げ続けた政府には、事故以降、国内で原発の新増設が見込めなくなった穴を海外事業で埋めようという思惑があったのだろうが、そのシナリオは破綻したと考えた方がいい。国内外で原発にどう向き合っていくのか、政府は政策を抜本的に見直す責任がある。各重電メーカーにとっても経営戦略の練り直しは急務だ。

 日立が英中西部アングルシー島で計画していた原発2基の事業費は、当初の2兆円から3兆円に増えた。三菱重工がトルコ黒海沿岸のシノップで計画していた原発も、事業費が当初比で2倍以上の5兆円に上る見込みになった。

 事業費が高騰しても、それを上回る収益を得られれば採算が取れるのだが、公的支援や電気代の水準などを巡る英国、トルコ両政府との交渉で、事業費を回収し、その上で利益を確保できる環境が望めないことが濃厚になったのだ。

 買収した米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が原発事業に失敗、その余波で巨額の負債を抱えて一時、経営危機に陥った東芝も、海外の原発事業を巡る情勢判断を誤った事例だ。日立、三菱重工の2社は傷口を広げる前に深入りを避ける道を選んだ。

 原発は地震や津波への対策の有効性などを巡って議論が続いているが、少なくとも、利益を確実に生み出すのかという経済合理性の面からは、疑問符を付けざるを得ない状況になった。こうした状況は今後、強まりこそすれ、弱まることはないだろう。

 そうだからといって、直ちに日本は原発に背を向けることはできない。稼働中の原発の安全確保は当然だが、福島第1原発事故の処理をやり遂げなければならない。そのほかにも老朽化などに伴って廃炉対象の原発が増えてこよう。使用済み核燃料などの問題もある。

 こうした課題に取り組むための資金、技術開発、人材育成などをどう手当てするか。将来の電源構成比率なども含めた原子力政策全体を、最新の情勢を踏まえて考え直す時期にきたのではないか。(共同通信・高山一郎)

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