2019年の世界経済は減速するとの見通しが多い。米中の貿易摩擦、中国経済の変調、英国の欧州連合(EU)離脱などリスク要因が積み重なっているためで、成長の鈍化にとどまらず景気後退に陥る恐れも指摘されている。世界経済の安定成長へ主要国の緊密な政策協調が必要だ。

 昨年12月から年明けにかけて、世界の金融市場は米国株価の乱高下で大荒れとなった。大きな原因は米中貿易摩擦に対する警戒感だ。今月9日まで行われた米中の貿易協議では、一定の進展があったとされているが、二大経済大国の対立は安全保障まで絡む覇権争いとなっており、協議の行方は楽観できない。

 3月1日の交渉期限までに妥結できなければ、高関税による貿易の縮小や輸入価格の上昇などで、両国はもとより世界経済が悪影響を受ける。米国は一方的な保護主義が自国にも跳ね返ってくることを認識するべきだ。中国も知的財産権の侵害や国有企業への補助金など構造問題の是正に努めなければならない。

 しかし、仮に米中貿易摩擦が沈静化に向かったとしても、大きな不安がある。世界経済を支えてきた米国の景気に陰りが見えることだ。今年は大型減税の効果が薄れることなどで、景気拡大にブレーキがかかるとの見方が多い。さらに、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げと資産縮小の路線は性急すぎ、米経済の足かせになっているとの分析も出ている。

 米国の金利上昇は新興国の通貨下落と米国への資金流出につながる恐れもある。FRBには慎重な政策運営を求めたい。その点で、パウエル議長が4日、利上げを柔軟に見直す姿勢を示したのは、適切な政策転換と評価できる。今後も世界経済の動向を注視しながら、市場との丁寧な対話に努めてほしい。

 すでに減速している中国経済の先行きも心配だ。中国は不動産バブルと企業部門の膨大な債務を抱えており、経済の失速からハードランディング(急激な悪化)に至る懸念が否定できない。ここに米国との貿易摩擦の激化が加われば、致命的な打撃となりかねない。

 中国当局はインフラ投資などの財政政策と金融緩和で景気を刺激し、経済の軟着陸を図る構えだが、不動産市場の過熱や人民元相場の下落、資金流出を招くリスクもある。経済政策の細心のかじ取りが必要とされる。

 欧州経済も成長が鈍化しつつある上に、不安材料が少なくない。その筆頭が英国のEU離脱だ。離脱協定案が英議会で否決される公算が大きくなっており、3月末に「合意なき離脱」が現実になれば、英国の経済と国民生活に大混乱が起きるのはもちろん、EU経済、さらに世界経済に動揺が広がるだろう。

 欧州中央銀行(ECB)は昨年末に量的金融緩和を終了したばかりで、秋ごろにも利上げに転じる方針だが、「金融政策の正常化」を急ぎすぎてはならない。柔軟で機動的な判断を望みたい。

 世界的な景気後退を回避するためには、主要国の連携が欠かせない。20カ国・地域(G20)首脳・閣僚会議などの場で、自由貿易と多国間主義の価値の再確認に努めるとともに、万一の経済危機に迅速に対応できる態勢を整えておくべきだ。日本も世界の自由貿易体制を主導する役割を果たしたい。(共同通信・柳沼勇弥)

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